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dipのブランドアンバサダーに大谷翔平選手が就任 野球より理念に焦点をあてたプロモーション設計の狙い

 2023年12月、dip(ディップ)はメジャーリーガーの大谷翔平選手(以下、大谷選手)とのブランドアンバサダー契約を発表。しかし、公開したテレビCMでは、大谷選手はスーツを着用しており、野球について一切触れなかった。本記事では、iU大学教授の江端浩人氏がdipのマーケティング統括部長を務める堀一臣氏にインタビュー。本プロモーションの狙いと設計の裏側、プロモーション設計の考え方を紐解く。

dipが大切にする製品を宣伝しないプロモーション

江端:dipさんは、以前から乃木坂さんを起用した「仕事探しではなく仕事選び」というメッセージを掲げるなど、製品のアピールではなく、時代の流れや世の中の真理(時代のインサイト)を捕まえて視聴者の共感を促すプロモーションを行っている印象です。このような世論を巻き込むようなプロモーションを行う理由をお聞かせください。

江端浩人事務所 代表 江端 浩人氏
日本企業や外資系のマーケティングや事業責任者を歴任 現在はiU大学教授、MGCのシニアマーケター、AlMONDOの顧問なども兼任

堀:はい、理由は大きく二つあります。一つ目が、企業理念に沿って行動していることです。当社は「私たちdipは夢とアイデアと情熱で社会を改善する存在となる」を企業理念として掲げています。従ってすべてのアクションは、この企業理念に沿って判断しています。

 二つ目が、市場の性質が挙げられます。有期雇用者の市場は、人手不足であることが喫緊の課題です。だからこそ、我々がビジネスを成長させていくためにも、他社とシェアを奪い合うのではなく、市場自体を広げていく必要があると考えています。そうすると必然的にユーザー、顧客、社会の課題を解決して、より多くの人が働く機会を増やすことが重要になります。DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)の課題にも向き合っていて、性別、人種、年齢にとらわれない仕事選びをしましょうというメッセージの発信も積極的に行っています。

 これらの理由から、我々が行うプロモーションは、ユーザーや社会の根本的な課題を解決し、働く人の機会自体を増やすことに重きを置いたものになっていると思います。

ディップ株式会社 商品開発本部 マーケティング統括部長 堀 一臣氏
新卒で資生堂に入社し、マーケティング業務に携わった後、ゲームメディアの運営を行うGame Withでマーケティング戦略部を新設。その後、経営に近い距離でマーケティングがしたいという想いと、dipのフィロソフィーに共感したことから2021年にマーケティング統括部長として入社した

江端:貴社のプロモーションには、自分の会社の名前を覚えてもらうことよりも、生活者からの共感を誘い、ターゲットに受け入れてもらいやすくなる印象がありました。そういった理由からだったんですね。

スーツを着用した大谷選手の起用 狙いは企業認知率の向上

江端:貴社では、ブランドアンバサダーとして大谷選手を起用して話題となりました。ただ、他社の大谷選手を起用した広告とは異なり、野球の話が一切出てこない点が特徴的です。大谷選手を今回のような形で起用した狙いはなんですか。

堀:本プロモーションの大きな目的は「dipの企業認知率向上」でした。当社は「バイトル」や「はたらこねっと」などのサービスに対しての認知度は高いですが、企業としての認知度にはまだまだ伸びしろがあります。世の中からの企業への認知や信頼が高まれば、それは同時にサービスへの信頼も高まり、ワンストップで経営や人材の課題を任せてくださるお客様も増えると考えました。

 つまり、サービスではなく、dipのイメージを幅広い年代の方に伝えなければなりません。そこで、年代性別問わず支持されており、かつ当社のフィロソフィー「dream,idea,passion」を体現されている大谷選手を起用しました。

 加えて、dipの「信頼性」や「先進性」も多くの方に伝えたいと考えた際に、大谷選手の野球の部分ではなく、彼自身のフィロソフィーに焦点を当てるほうが、より当社が伝えたいメッセージにフィットしていると考えました。このような経緯から、野球のユニホームではなくスーツを着ていただき、彼自身の人間性を表現するプロモーションになりました

大谷選手を起用したプロモーションのキービジュアル(dip公式サイト特設ページより)

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この記事の著者

江端 浩人(エバタ ヒロト)

iU大学教授、江端浩人事務所 代表、MAIDX LLC代表、AlMONDO事業顧問

米ニューヨーク・マンハッタン生まれ。米スタンフォード大学経営大学院修了、経営学修士(MBA)取得。伊藤忠商事の宇宙・情報部門、ITベンチャーの創業を経て、日本コカ・コーラでマーケティングバイスプレジデント、日本マイクロソフト業務...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

岡田 果子(オカダ カコ)

IT系編集者、ライター。趣味・実用書の編集を経てWebメディアへ。その後キャリアインタビューなどのライティング業務を開始。執筆可能ジャンルは、開発手法・組織、プロダクト作り、教育ICT、その他ビジネス。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/02/08 09:00 https://markezine.jp/article/detail/44691

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