dipが大切にする製品を宣伝しないプロモーション
江端:dipさんは、以前から乃木坂さんを起用した「仕事探しではなく仕事選び」というメッセージを掲げるなど、製品のアピールではなく、時代の流れや世の中の真理(時代のインサイト)を捕まえて視聴者の共感を促すプロモーションを行っている印象です。このような世論を巻き込むようなプロモーションを行う理由をお聞かせください。
堀:はい、理由は大きく二つあります。一つ目が、企業理念に沿って行動していることです。当社は「私たちdipは夢とアイデアと情熱で社会を改善する存在となる」を企業理念として掲げています。従ってすべてのアクションは、この企業理念に沿って判断しています。
二つ目が、市場の性質が挙げられます。有期雇用者の市場は、人手不足であることが喫緊の課題です。だからこそ、我々がビジネスを成長させていくためにも、他社とシェアを奪い合うのではなく、市場自体を広げていく必要があると考えています。そうすると必然的にユーザー、顧客、社会の課題を解決して、より多くの人が働く機会を増やすことが重要になります。DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)の課題にも向き合っていて、性別、人種、年齢にとらわれない仕事選びをしましょうというメッセージの発信も積極的に行っています。
これらの理由から、我々が行うプロモーションは、ユーザーや社会の根本的な課題を解決し、働く人の機会自体を増やすことに重きを置いたものになっていると思います。
江端:貴社のプロモーションには、自分の会社の名前を覚えてもらうことよりも、生活者からの共感を誘い、ターゲットに受け入れてもらいやすくなる印象がありました。そういった理由からだったんですね。
スーツを着用した大谷選手の起用 狙いは企業認知率の向上
江端:貴社では、ブランドアンバサダーとして大谷選手を起用して話題となりました。ただ、他社の大谷選手を起用した広告とは異なり、野球の話が一切出てこない点が特徴的です。大谷選手を今回のような形で起用した狙いはなんですか。
堀:本プロモーションの大きな目的は「dipの企業認知率向上」でした。当社は「バイトル」や「はたらこねっと」などのサービスに対しての認知度は高いですが、企業としての認知度にはまだまだ伸びしろがあります。世の中からの企業への認知や信頼が高まれば、それは同時にサービスへの信頼も高まり、ワンストップで経営や人材の課題を任せてくださるお客様も増えると考えました。
つまり、サービスではなく、dipのイメージを幅広い年代の方に伝えなければなりません。そこで、年代性別問わず支持されており、かつ当社のフィロソフィー「dream,idea,passion」を体現されている大谷選手を起用しました。
加えて、dipの「信頼性」や「先進性」も多くの方に伝えたいと考えた際に、大谷選手の野球の部分ではなく、彼自身のフィロソフィーに焦点を当てるほうが、より当社が伝えたいメッセージにフィットしていると考えました。このような経緯から、野球のユニホームではなくスーツを着ていただき、彼自身の人間性を表現するプロモーションになりました。