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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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効率化を言い訳に「顧客」を忘れていないか?アクセンチュアが分析する社会トレンド&裏にある生活者の本音


テクノロジーの急激な進化と、その裏にある生活者の本音

MarkeZine編集部:次に3つ目のトレンド「創造性の逆境」について教えてください。

番所:こちらも生成AIによる影響を受けたトレンドです。近年、生成AIを活用するクリエイティブ事例の増加も相まって、企業やブランドから発信されるコンテンツが似通ったものになっていると感じませんか?

 これに関連したデータとして、2019年時点で既に全米映画上位25作品のうち80%がリメイクやスピンオフだったというレポートがある他、世界中の35%の人々が「ブランドのSNSコンテンツはどれも似通っていると感じる」と回答したという調査結果も報告されています。これらのデータは、生成AIを活用したり、過去の成功を再利用したりするといった手法をとった時、往々にして企業側の効率重視やコスト削減が顧客に透けて見えてしまう可能性があることを示唆しています。

MarkeZine編集部:多くのマーケターにとって耳が痛い内容であるように思います。テクノロジーの進化が著しい分、その反面もありありと見えてしまう場面が多々あるのですね。

番所:ええ。実は4つ目の「テクノロジーの飽和点」も、新しいテクノロジーが顧客体験に悪影響を及ぼす可能性を指摘するトレンドです。

 例として、皆さんが一番イメージしやすいのは、アプリのプッシュ通知によるストレスでしょうか。昨今は、各社が顧客との繋がりを構築するためにアプリを活用していますが、自分にとって適切ではないタイミングでアプリからの通知が来ることも度々あると思います。こうした度重なる通知によって、自分の生活自体が「テクノロジーに支配されている」と感じてしまう人も出てきているのです。また、先述したように、自動音声によるレストランの予約サービスに拒否感を示す人なども一定数いると思われます。テクノロジーによる利便性を顧客に押し付けてしまうと、望んでいない結果を招くこともあるという点には留意しなければなりません。

旧来の価値観が崩れた今、マーケターは顧客をどう見るべきか

番所:最後に5つ目のトレンドは「成功神話の解体」です。ここまで紹介してきた4つのトレンドからわかるのは、世の中に新たな「自由」と「不自由」が生まれているということ。不安定な世界情勢に不安感が募る一方、テクノロジーによる効率化があらゆる場面で進み、利便性を享受しているところもある。そんな現代の自由と不自由が、人々の価値観を大きく変えています

 たとえば、以前は大学進学、就職、結婚、家を買うといった事柄が、人生の成功を示す1つのマイルストーンになっていました。しかし、近年は価値観が多様になり、これまで当たり前とされてきた人生観の解体・再構築が始まっています。実際、ライフイベントはおろか、「1年先までの計画しか立てない」もしくは「まったく計画を立てていない」と回答する人が約半数いるというデータもあります。

MarkeZine編集部:成功神話が解体された後、再構築はどのように進むと思われますか?

番所:日本国内では既に、教育は学歴重視からスキル重視の考え方へ、子育ては周囲の期待からではなく自らの価値観で決断するものへと変化している様子が見られます。また、マイホームに関しては、長期型のローンを組み働きながら返済していくといったスタイルだけでなく、返済不安の解消や将来的な住み替えの需要に応えるオプションが用意されたローンが登場しています。

 こうした現象からマーケターが考えるべきは、従来の枠組みに当てはめた「30代・子育て中・世帯年収はいくら」といったセグメント分けの見直しです。成功神話が解体されると、それまでの人生の指標が曖昧になり、人々はそれぞれの主観で人生の豊かさを考えるようになるでしょう。従来の既成概念にとらわれず、予測不可能な顧客の行動や価値観を理解し、一人ひとりに最適な形で商品やサービスを提供する柔軟性が求められています。

MarkeZine編集部:解説ありがとうございました。「Accenture Life Trends 2024」を踏まえ、日本企業に求められるアクションを後半でもう少し考えていきたいと思います。

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この記事の著者

塚本 建未(ツカモト タケミ)

ライター・編集者・イラストレーター。早稲田大学第二文学部を卒業後、社会人を経て再び早稲田大学スポーツ科学部へ進学。2度目の学部卒業後は2つの学部と高校デザイン科で学んだ分野を活かすためフィットネス指導者向け専門誌「月刊Fitness Journal」編集部に所属してキャリアを積み、2011年9月から同雑誌の後継誌「月刊JAPAN FITNESS」編集部の中心的な人物として特集・連載など数多くの誌面を担当した。現在はWebメディアに主な...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/07/02 15:32 https://markezine.jp/article/detail/44960

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