スキルアップした従業員の転職は“損失”なのか
──ここからは組織側にフォーカスしていきます。リスキリングは組織に実施責任があるとうかがいました。従業員のリスキリングを組織が推進するにあたって、うまく運ぶ(=組織の競争力向上につながる)ポイントを教えてください。
私自身が様々な企業の担当者と話をする中で、感じていることをお伝えします。第一に従業員の「自己実現」がキーワードになると思います。従業員がやりたいことを実現できたり、なりたい将来像に近づけたりする機会を企業側がいかに提供できるかが重要になってくるでしょう。

そして「この部署に異動したいなら、このスキルが必要です」など、企業側が人材に求める条件を明確に示すことも重要です。組織の中で自分がやりたいことを実現するために必要なスキルがわかれば、従業員が自らそのスキルを習得しようとするサイクルが生まれると思います。
組織はリスキリングを従業員の成長機会としてはもちろん、一人ひとりの自己実現のために提供していくことが大切です。そうすればその企業に入社したいと思う人が増えるでしょうし、既に働いている人はその企業でずっと働きたいと思うようになるのではないでしょうか。
リスキリングはHOW、つまり手法であり、目的ではありません。一人ひとりの人材は「希望の部署で働きたい」「新しいことにチャレンジしたい」などの目的を持っています。企業側は「どのようなスキルをどのレベルまで習得すれば、その目的を達成できるのか」を伝えることで、リスキリングを後押しできるのです。今の日本はちょうど過渡期にあり、多くの日本企業でこのような流れが起きていると感じます。リスキリングの大切さを国が発信するだけではなく、企業側も対応することで、この流れは加速していくでしょう。
従業員のリスキリングを後押ししたい企業のために、日本リスキリングコンソーシアムでは企業や自治体などの団体代表者が、対象の社員・職員を「団体会員」として登録し、指定プログラムの受講状況をプライバシーに配慮しながら一括管理できる「団体会員・団体受講機能」を提供しています。
──リスキリングを後押しすることで優秀な人材が育ったとしても、その人材が他社に転職してしまった場合、企業にとっては損失になりませんか?
たとえ人材が出ていっても、また新しい人が入ってくれば良いと考えられるのではないでしょうか。出ていった人以上に優秀な人が入社し、長く働いてもらえるようになれば、問題は解決すると思います。そのためにはやはり魅力的な企業であろうと努力することが大切ですね。
──最後に、リスキリングにトライするマーケターと、従業員(=マーケター)のリスキリングを支援する組織のマネージャー層に向けて、メッセージをお願いします。
日本も世界も変化が激しい中で、様々な機会が生まれています。それらを逃さないための手段としてスキルの習得があります。日本リスキリングコンソーシアムとしても、より多くの方々のリスキリングを後押ししていきたいと考えています。
今回お話ししたように、日本リスキリングコンソーシアムでは初歩的なものから高度なものまで幅広いスキルを習得できるプログラムを取り揃えています。どなたでも受講できますので、ぜひ活用していただきたいと思います。
