データ活用で意識すべき、3つのポイントとは
続いて安室氏は、データを活用する際もポイントが3つあると指摘した。1つ目は、成果が出せる(わかりやすい)ことに集中する点だ。
例として、安室氏は成約したある顧客のケースを紹介した。この顧客はサイトへの最初のアクセスから約1年間様々なサイトを見た上で、最終的に店舗での購入に至っていた。ログを確認すると、来店して買う1ヵ月半ほど前からサイトへのアクセス数が急増していた。
「取り組んでいる施策がログとして出てくると、なぜここで離脱したのか、なぜこのページをよく見るのかなど、顧客視点で考えることができる。そういう意味でも『わかりやすい』ことが重要だと思います」(安室氏)
顧客を理解したいという思いから広告の最適化やサイトの出し分けに取り組むようになり、顧客がいつ広告を見て来店し購買に至ったか、商業施設での試乗体験会に来た顧客は最終的に購買に結び付いたかなどのデータがすべてつながっているのがSUBARUの強みだ。
2つ目は、成果を周囲にアピールして仲間を増やすこと。社内でいい取り組みをしていても、表に出さないと周りに知られないままとなってしまう。成果をアピールすれば、おもしろがってくれるメンバーが一緒にやりたいと手を挙げてくれる。
3つ目は、エンジニアとマーケターの二人三脚だ。業務を理解し仮説を立てられるマーケターとSQLを描けるエンジニアとが組んだ時、業務が進めやすくなるという。

テレビCMの広告評価にデータを活用
続いて、安室氏はSUBARUが取り組んだデータ活用事例としてテレビCMの取り組みを挙げた。「これまではテレビCMの投資効果を聞かれても、実際はよくわからなかった」と安室氏。2020年に、SUBARUではテレビCMの広告評価のために自社でデータ基盤を構築し、広告効果を可視化できるようにした。1分単位でアクセス状況がわかるWebログを持っていることで、テレビCMが流れた直後にWebサイトがスパイクする様子が手に取るようにわかるようになったのだ。
CMが流れた日時や視聴率については業者からデータを購入し、社内の担当部署が管理するCM発注情報と照らし合わせ、顧客が見たCMや購入時期などのデータを踏まえて1件あたりの単価を出しているという。テレビCMやWeb検索による成約への影響、およびコスト効率を測れるようになったのだ。
特に安室氏が現職に就いた2023年4月以降は、テレビCM投入後の自社サイトへの流入数が大幅に向上。1GRP(延べ視聴率:世帯視聴率×CM本数)あたりの指名検索数が、前年比で14.5倍に伸びた。
「人によって意見の分かれるテレビCMのクリエイティブの効果が可視化できました。データ活用のコストで見ると、最もインパクトが大きい取り組みです」「同じ広告費でも検索数が伸びると、1検索あたりのリフト単価で見た時に半額になります。広告投資の効果が2倍になっているなど、社内での説明もスムーズになりました」と安室氏は続けた。
