リニューアル前後の購買データからわかる意識変化
ある柔軟剤の事例では、リニューアル前の平均購入価格は191円だった商品が、リニューアル後に40円値上がりした231円に。その商品を継続購入しているかどうかを購買データで追った。

リニューアル前に購入していた価格帯でユーザーを大きく二つに分けると、図のように定番価格帯ユーザーのほうがリニューアル後の購入継続率が高く、価格ではない「商品自体の価値」で購入する傾向がわかった。
また、値上げ後に購入した商品価格帯の構成比は、安売り価格帯ユーザーは引き続き209円以下での購入が多かった。値上がり時に価格が安い他のブランドへスイッチするリスクを持つ層だと判断できる。定番価格帯ユーザーは、240円以上での購入構成比の割合が一番高い一方で、209円以下の安売り価格での購入比率も増えており、リニューアル前と比べて離反のリスクが高まっていることが見てとれる。
値上げラッシュから「価格弾力性」のあるマーケットへ
山田氏はインスタントコーヒーの値上げの事例も紹介した。こちらでは、リニューアル前の平均購入単価が286円だったのに対し、リニューアル後は平均購入単価が305円となり、リニューアル前後の購入個数の推移を見てみると、値上げ後の購入個数が減少したのがわかった。その要因を探るため、年間の購入金額によってユーザーを3段階に分類し、「どの層の購入が減ったか」を分析した。

販売価格の違いによって起こる購入個数の変化、いわゆる「価格弾力性」の観点で見ると、値上げ前のヘビー層やライト層ではほとんど価格弾力性がなく、「価格を上げても下げても売上が変わらない」という状況であった。通常では「価格を下げると購入個数が増える」という弾力性が現れるのに、なぜ事例に取り上げたインスタントコーヒーでは現れないのか。
山田氏は「値上げ前の価格レンジが非常に狭く、低価格が常態化していたため、その価格でしか売れない状態であった」と説明した。

値上げ前後における価格帯ごとのレシートの構成比では、値上げの前も後も290円台での購入が一番多くなっている。
値上げ後は購入価格帯のレンジが広がり、価格弾力性が出てきている。さらに細かく見ると、ヘビー層は290円〜300円台に価格を下げると購買が増加し、260円台まで下げればもう一段購入が促進されることがわかった。ライト層も価格弾力性が見られるものの、ヘビー層に比べると価格に対する反応が緩やかで、値下げによる購買促進効果を得にくい。
このことから、「ヘビー層が購入する価格を選ぶようになったことが、商品全体の売上が減少した要因」だと分析できる。
ブランドや商品によるものの、値上げラッシュによって生活者による価格受容性の変化が生じ、「定番価格での購入者やヘビーユーザーと呼ばれる商品のファンでも、生活防衛の意識から、値上げ後は特売価格で購入する人が増えている」と山田氏は語った。
そんななか、値上げ前の購入価格帯が非常に狭く、安売りが常態化していた状況から、値上げ後に価格弾力性が出てきたことで、「値上げのトレンドがひと段落してくれば、価格弾力性のあるマーケットに生活者も慣れてくるだろう」と山田氏は見解を示し、セッションを締めくくった。