「凹んだ話」を起点にコミュニケーションの機会を創出
——具体的にプロジェクト内で行ったことを教えてください。
まず、2022年の12月にSNSでキャンペーンを実施しました。X(当時のTwitter)上にて、皆さんの凹んだエピソードを募集し、100人に対して、鍋つゆのセットと直筆の手紙を送りました。そして同時期に、表参道にて「凹メシ食堂」というポップアップショップを10日間設置。凹んだエピソードを持ってきてくれた方に対して、鍋を1食無料でプレゼントしました。
このプロジェクトでうまくいったことを受けて、2023年の7月には第2回のポップアップショップ「あそべる凹メシ食堂」も開催しています。

他にも、プロジェクトの一環として2024年1月にはミツカン社内の声を拾い上げて、それを基に期間限定の社員食堂を作るといったインナーブランディング活動も行っています。
——「凹メシ」プロジェクトを進める上で気を付けていたことは何かありますか?
ミツカン商品の宣伝色が出ないように徹底しました。なぜなら、このプロジェクトで私たちが目指していたのは、企業のファンを作ることで商品PRではないからです。そのため、商品ではなく“凹んでない課のスタッフ”を前面に押し出しました。
参加した方々の話を親身になって聞いて、「良かったらおいしいものを食べて元気出してね」と声掛けをする。このように、お客様とリアルにコミュニケーションを行うことで、信頼関係を構築していきました。
測りにくい施策の効果を測る「推定LTV」の考え方
——メーカー企業は、直接顧客のデータを保有できていないことから、CRM施策の成果を測るのは難しいと思いますが、貴社では、どのように効果の検証を行っていましたか?
当社は現在、マス広告を活用したプロモーションも積極的に行っていますが、やはりCRM施策と比較して購買につながっていることがわかりやすいと思います。
一方で、マス広告では、基本的に商品のプロモーションを行っているため、ミツカンのファンを増やすといった観点からはあまり効率的ではありません。故にミツカンという企業を好きになってもらうために、私たちが行っているCRM施策はやはり大きな意味があると感じています。
この効果を可視化するための一つとして独自に設けているのが「推定LTV」という指標です。この推定LTVは、「コアファン増加人数×推定購買増額」の計算式で導き出すもの。コアファン増加人数とは、名前の通り、その施策によってどれだけコアファンの数が増加したかを示す数字です。
「凹メシ」プロジェクトでいえば、ミツカン商品に普段から触れてくださっている方のうち、「凹メシ」というワードを知ってくれている方でコアファンになってくれている割合を調査データから推定しています。
一方、推定購買増額は、IDPOSデータから推定しています。当社商品を購買してくれているIDに対して、当社のファンレベルを調査して照らし合わせ、ファン度が高い人における購買の増加金額を計算して係数を導き出しました。
このコアファン増加人数と推定購買増額を掛け合わせることで、施策を通して生まれたファンがどれくらいの金額をミツカンのために使用してくださっているのかを概算することができます。
他にも、SNSのフォロワー増加数や、メディアに取り上げられた際にペイドメディアへの露出と比べて抑えられたコストなども指標の一つとして見るようにしています。