人の成長は打席の数と真剣さで決まる
“らしさ”で言うと、2020年に発足した「Jクラブスポンサーマッチングプロジェクト」は、マネーフォワードらしい活動だったと思います。コロナ禍でJリーグの試合会場に観客を動員できない時期が長く続き、各クラブの収益に大きな打撃を与えていました。当社ができることを考えた結果、J1からJ3に所属する計27クラブに対して、スポンサードを検討する企業を公募しました。完全無償でマッチング機会を提供することにより、Jクラブの盛り立てに少しでも貢献できればと考えたわけです。
このプロジェクトがバックオフィスSaaSの売上に直接つながることはありませんが、Jリーグというスポーツ産業を前に進めるための取り組みを損得勘定抜きに実行できるところは、当社の良さであり強みでもあると感じています。
──人材の育成や組織の強化について、中長期的に取り組んでいることはありますか?
マーケティングに限らず、人の成長は「打席に立った数×打席での真剣さ」で決まると思っています。企業としてできる支援は、真剣に立てる打席数をできるだけ数多く提供することです。そのために、当社では事業部制を採用しています。企業によっては職能で組織を切り分けているところもありますが、当社では「HR」「経費」などの事業で組織を切り分け、各組織にマーケティングやインサイドセールス、フィールドセールスの担当者が所属する形をとっています。
この組織形態の最大のメリットは、各担当者がオーナーシップを持てる点にあります。ある種“小さな社長”のような気持ちが生まれるんです。これが先に述べた真剣に立てる打席につながっています。
職能で組織を切り分ければ、今より効率化できる部分は恐らくあると思います。ただ、中長期的な視点で考えると、メンバーの成長がビジネスにより効いてくると思っていて。そのために一定の非効率は飲み込んで、真剣に立てる打席数を確保するようにしています。
──最後に、今後の展望をお聞かせください。
マネーフォワードが事業を展開している理由は、ミッションである「お金を前へ。人生をもっと前へ。」の実現にあります。今の我々はTAMの1%に満たない、一歩踏み出したばかりの状況です。非常に大きなミッションではありますが、実現のために提供できる価値を拡大し、伝えていく。最終的には顧客に満足していただくため、愚直に取り組んでいきたいと考えています。