人流の回復で、広告出稿方法も大きく変化
──その他、気になるトピックスはありましたか。
北原:人流が回復してきましたので、プロモーションメディア広告費が伸びてきています。人々の外出機会が増えたことから屋外広告・交通広告が大きく伸びています。特に渋谷・表参道・銀座などの人が多く集まるところ、インバウンドなどの需要があるところに集中しています。また屋外もディスプレイ化が進んできたこともあり、企業としても出稿しやすくなってきました。
DM広告は、コロナ禍で一時期需要が高まりましたが、外出が増えるに連れ、再び減少トレンドに戻ってきています。
森永:屋外広告・交通広告で言いますと、人流データ×OOHからPDCAが回しやすくなっていたことも、企業が出稿しやすくなった大きなポイントだと思います。
メディアを掛け合わせ、新たな打ち手を模索する
──2024年に注目したいトピックスはありますか。
北原:ひとつはオリンピックですね。様々なキャンペーンがオリンピックをめがけて行われますし、特にテレビCMはその影響を顕著に受けるので注目したいポイントです。またHR(Human Resources)領域・インバウンドの領域はさらに活発化してくることが予想されるので、それにともなう広告が出てくるかと思います。
森永:また金融や株価など、お金の流れも大きく変化し、金融リテラシーが求められている流れもあります。こうした点にも注目したいですね。
──最後に、マクロなデータをマーケターが実務で活かすためのヒントを伺えますか。
北原:インターネットは販促に非常に強い面を持っていますが、インターネットがすべてを解決するわけではありません。長期的な記憶の保存にはマスメディアの力も必要です。持続的な事業成長のためには、長期的な記憶の保存と短期の成果のそれぞれを鑑みて、目的に合わせた広告プランニングをしていく必要があります。
また、「非効率に思われている施策は、本当に非効率なのか」という視点も大事です。ポスティングなども、特定の地域に当てたマーケティング活動を行う際は非常に有効です。新聞広告がSNSで拡散されることもありますよね。日々の忙しい業務の中では、どうしても効率や費用対効果、成果の可視化に目が向きがちになります。特に若手のマーケターには、こうした目線をストレッチするためにも見ていただきたいです。
また、「日本の広告費」は広告費に焦点をあてて分析をしていますが、メディア全体のパワーを見渡して、それぞれの傾向を長期のスパンで見て取れます。メディア全体を定期的に見ていただくことはもちろんですが、各媒体の連動なども俯瞰して見られるのもこうしたマクロデータの良い点です。手法にとらわれず、各メディアの長所・短所・特徴に加えて、各メディアを掛け合わせることで、事業に合わせた今まで試していない打ち手を探していただければと思います。
森永:シニア世代と呼ばれる方々もかなりの割合でスマホを持っていますし、見逃し無料配信動画サービスを見ている人も増えてきています。シニア世代の消費行動も変化してきているので、マクロデータで俯瞰して様々な施策を見直してみるのも良いかと思います。