ASCでさらに効果を上げるノウハウを4つ共有
MZ:ここからはMeta社プロダクトにおけるAI活用をハックしているワンスターに、ASC活用のノウハウを共有いただきます。
小又:今回はASCをより効果的に活用するための4つのポイントをご紹介したいと思います。
1.「Bid Multiplier」を掛け合わせ、AI×人間による精度の高いターゲティングを実現
小又:1つ目は、「ASC×Bid Multiplier(一部β版)」の掛け合わせです。実は、ASCのみでは、特定の年齢層に寄せて配信するなど細かな設定が行えません。Bid Multiplierを掛け合わせることで、年齢層や性別、配信面などに対してのオークション入札価格を細かい単位でコントロールすることが可能になります。
MZ:AIによる自動最適化をベースとしつつ、人間がテコ入れするイメージですね。
小又:はい、ASCとBid Multiplierを掛け合わせることで、より精度の高いターゲティングが実現します。たとえば、50~60代女性をターゲットにしたあるコスメ商材の広告配信で、Bid MultiplierとASCの相乗効果を出せた例がありました。前提として、ASCは基本的に「CV数の最大化」を目的として動きます。よって、ASCを用いると、ブランドのメインターゲット層を踏まえず、CV数が多くなる他の年代に配信比率が寄ってしまうといった問題が起こることがあるのです。コスメのような商材だと、メインターゲットである50~60代女性よりも年齢の低い層へ配信比率が寄ってしまう場合があります。
この事例では、Bid Multiplierを掛け合わせ、配信比率を50~60代に寄せたことで、メインターゲットからCVを獲得できるようになりました。他にもある健康食品の広告配信では、メインターゲットに比率を寄せた上で、ほぼ連日KPIを達成するほど安定した配信を実現できている例もあります。
2.ASCの結果をヒントに配信を設計し、全体効率を改善
小又:次に、「ASCを活用したキャンペーンと通常キャンペーンを並行して走らせる」という方法をご紹介します。
たとえば、ある健康食品のキャンペーンでASCを配信したところ、Androidユーザーの反応が特に良いことがわかりました。そこで同アカウント内の通常キャンペーン(BAU)で、Androidユーザーだけに絞って広告を配信した結果、低CPAで配信ができ、CV数も増やすことができました。
さらに、ASC自体のAndroidの比率も上昇しました。特定の教師データをアカウントに与えることでASCの挙動に変化を与えることができることがわかりました。
3.トラフィック配信を組み合わせ、ASCの配信先を拡大
小又:3つ目は、「ASCとトラフィック配信を同時に行うことで、ASCの挙動に変化を与える」という方法です。広告配信では最適化がかかっていくことで探索の幅が狭まり、配信先が限定されていってしまいます。ASCはアカウント全体の学習も加味して配信先を決定するため、浅いファネルの教師データをアカウントに与えることでASCの探索幅を広げることができ、リーチできるユーザーを増やすことができます。
4.クリエイティブを揃えてAIの学習範囲を限定し、運用を安定させる
小又:そして最後に紹介するASC活用ノウハウは「広告クリエイティブのフォーマットを揃えて運用を安定させる」というものです。AIを使った広告配信では、様々な教師データを与えるのがオーソドックスな戦い方です。しかし、特徴量が多すぎることによって、逆に最適化がうまくかからず効率が安定しないということもあり得ます。そこでクリエイティブフォーマットを揃えることによって特徴量を限定し、学習を促進することで効率を安定させることができます。
MZ:情報をたくさん学習させたほうがカバー範囲も広がると考えてしまいそうですが、逆に情報を絞ったということですね。実際に検証してみたからこそ得られたノウハウだと思います。
中本:AIを活用した広告運用では流動性を持たせることが大前提としてあります。しかし、やはりKPIを達成できない場合もあるのが現状です。KPIを達成できないときはどうすればよいかといった知見やノウハウは、日々トライ&エラーを重ねられているワンスター様の賜物だと思います。