“広告だらけ”のサイト、MFAの収益構造
有園:デジタルマーケティング業界に今、大きな影響を与えているのがMFAです。このようなサイトはSEO(検索エンジン最適化)を悪用しており、Googleなどの検索エンジンのクオリティが下がっているという調査結果も出ています。
その実態について、よく知らない人も多いでしょう。あらためて、MFAとはどういうものでしょうか。
杉原:Made-for-Advertisingという通り、簡単に言うと広告のために作られたWebサイトです。このようなサイトは実は昔からあって、アービトラージ(Arbitrage/アビトラ)サイトと呼ばれてきました。
MFAの特徴は、コンテンツに対する広告比率が異様に高いこと。広告だらけのサイトです。また、掲載されているコンテンツは低品質で、ひな形を使って作成されています。古いコンテンツが再利用されることも多いです。
2023年には、主要な広告業界団体のANA(全米広告主協会)、4As(アメリカ広告業協会)、WFA(世界広告主連盟)、ISBA(英国広告主協会)がMFAの定義や特徴について発表し、問題提起しました。また、ANAの調査では、オープンウェブのプログラマティック・メディアの広告費のうち、約23%に当たる200億ドルが適切な広告投資として機能していない、という結果も出ています。
MFAと共存共栄するプラットフォーマー
有園:MFAの基本的な構造は、広告トラフィックを安く仕入れて、広告枠を高値で売って利ざやで儲ける。そのため、金融用語であるアービトラージ(裁定取引、利ざやで稼ぐ手法)が使われていますね。
具体的にイメージすると、検索連動型広告を活用したサイトを作り、1クリック当たり10円のコストをかけてアクセスを誘導したとします。1インプレッションで1円の売り上げを得られるとすると、1ページに100個の広告を貼れば、1ページビュー(PV)で100円の売り上げとなり、90円の利益が出る。テンプレートを使ってコンテンツを作成すれば、制作費もかからない。手を掛けなくても、1PVで90円儲かる、という構造ですね。
杉原:そういう構造なので、やはり生成AIの登場はMFAの拡大に大きく影響しているでしょう。サイトの作成、コンテンツ制作、広告掲出など、全て自動でできるため、制作費はほぼかかっていないでしょう。データ分析による収益のモニタリングまで自動化されています。
有園:検索エンジンを運営するプラットフォーマー側は、例えば「広告枠が10個以上あるページを検索結果から除外する」ということも技術的には可能ではないでしょうか。
杉原:巨大プラットフォーマーの場合、売上高が大きく落ちれば株価にも影響します。その結果、MFAと共存共栄してしまっている。最近では、大手経済紙がMFAサイトを運営していたことも明らかになり、大きな衝撃でした。
有園:みんなが「不都合な真実」を抱えていますね。
杉原:まさに。プラットフォーマーはMFAとも共存共栄し、売り上げを減らせない体質になってしまった。パブリッシャーもMFAが横行していることに気付いていながら放置している。広告主も同じで、MFAであろうとインプレッションを稼げているから困っていないという企業が多い。みんなに不都合な真実があるというのが、この問題の根深いところです。