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ブランドは気まぐれな消費者とどう向き合うべきか?

大多数のマーケターが意外と理解できていない?リキッド消費を正しく理解し戦略に落とし込むためのポイント

生成AIの影響はここにも。オープン型の価値提供システム構築の一手

MarkeZine編集部:こうした動きをどのようなスピード感で見ればよいですか? 5年、10年で実現していくようなものなのでしょうか?

久保田:私は技術の専門家ではないのではっきりはわからないのですが、AIの影響はやはりここでも大きいと思います。一気に進む可能性がないわけでもありません。

 たとえば、現在、RAG(Retrieval-Augmented Generation:検索拡張生成)というフレームワークが注目されているそうです。LLM(大規模言語モデル)のような大規模で汎用的なAIは能力が高いですが、ユーザーの質問が専門的になると正確な回答を得られないこともあります。しかし、大規模で汎用的なAIの能力をさらに向上させるには、膨大なデータと巨額の資金が必要です。

 これに対して、RAGはデータベースなどから拾い集めたユーザーの質問に関する情報を付加した上で、LLMに質問をするものです。これによって、汎用的なLLMのままで精度を高めることが期待できるため、一般企業においては汎用的なLLMにRAGを載せるというのが一般的になりつつあるようです。

 こうした動向を踏まえると、RAG部分に顧客の生活情報を反映させることで、まるでコンシェルジュのように、生活に溶け込んだアドバイス(あるいは最適なブランド提案)が可能になるのではないかと思います。もちろんそれには、複数企業の提携によるオープン型の戦略であることが必須ですが。

 しかし、RAGの活用に限らず、タイプ3の戦略を実現するには、大きなハードルもあります。競合と手を組めるか? 参画企業間の利害をどのように調整するか? など、経営者レベルでの判断が必要になってくるからです。

リキッド化は「シフト」ではなく「拡張」である

MarkeZine編集部:最後にお聞かせください。先生はリキッド化は今後も進んでいくと思われますか?

久保田:リキッド化により起きているのは、ソリッド消費だけの世界から、リキッド消費とソリッド消費が併存する世界への“拡張”です。未来のことはわかりませんが、リキッド消費が消滅し、ソリッド消費だけの世界に戻るということは、恐らくないでしょう。

 ただ、もちろん、リキッド化の動きに対して揺り戻しや反動が生じる可能性は十分にあります。最近で言うと、スローライフとかデジタルデトックスとか、一部ブームとしてありますよね。こういうブームが起こると、「リキッド消費の終焉」であるとか、「時代は戻った」と指摘される方もいるかもしれません。しかし、すべての人々が365日24時間スローライフとなり、インターネットもスマートフォンも捨ててしまうようになるとは到底思えません。私たち人間には意識がありますから、リキッド消費が目立つようになれば、それに反して、物を大切にしてゆっくりした生活を送ろうという主張も出てくるはずです。けれど、社会全体が30年前や50年前のような消費生活に戻ることはないと思います。

 また、リキッド消費については「善か、悪か」という議論もしばしば行われます。「リキッド消費は悪だ」という意見もあるのですが、いわゆる懐古主義的になって、変わっていく世の中を嘆いても仕方がないように思います。むしろ、人々の消費スタイルが変わっていくことを前提として、「それでは、どうすれば現在の状況の中で世の中をより良くしていけるか?」と考えていくほうが建設的だと思います。

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MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

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MarkeZine(マーケジン)
2024/06/19 09:30 https://markezine.jp/article/detail/45687

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