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若者・シニアで“旅行”に求めるものはどう違う?生活者の連想構造から「5つの旅行ニーズ」を読み解く

若者とシニアの旅行における「食」と「宿」

 次に、マインドディスカバリーマップを読み解く中で、若者とシニアの旅行における「食」と「宿」の差異に注目し考察しました。

 マインドディスカバリーマップの読み方の基本は、「近くにあるワード同士は意味が近い」「遠くにあるワード同士は意味が遠い」です。詳細な読み解き方もいくつかありますが、本記事ではその1つ「ギャップポジション」を活用し、「食」と「宿」が若者とシニアそれぞれのマップでどのようなポジションにあるかに注目して、意味合いの違いを分析しました。

図表4:マインドディスカバリーマップの読み解き方「ギャップポジション」異なるセグメントのマップ間での“同語”がどのようなポジションにあるのか、意味合いを比べて際に注目する。
【図表4】マインドディスカバリーマップの読み解き方「ギャップポジション」
異なるセグメントのマップ間での“同語”がどのようなポジションにあるのか、意味合いを比べて差異に注目する。

若者にとっての「食」と「宿」

 まず、若者の旅行において、「食」と「宿」はそれぞれどのような意味を持つのかを見てみました(図表5)。

図表5:若者の旅行における「宿」と「食」
【図表5】若者の旅行における「食」と「宿」

 若者では「食」や「宿」に関連するワードが、近しい位置に固まっており、「食」と「宿」が近いものとして捉えられていることが推察できます。宿泊先での食事を“旅行の食体験”と捉えており、外でご飯を食べるような行動は少なく、宿内の食を楽しむ旅行スタイルではないでしょうか。つまり若者は非日常的な宿泊という旅行体験を、宿泊先の中での食の楽しみをセットとして考えているため、コロナ禍を経て「食」を重視した旅が好まれている現在では、そこに紐づく「宿」にも妥協はせずに、お金をかけているのではと考えられます。

 また、「ホテル」と「旅館」については、近い場所に位置しており、宿泊施設として同義にとらえていると思われます。

シニアにとっての「食」と「宿」

 つづいて、シニアの旅行において、「食」と「宿」はそれぞれどのような意味を持つのかを同じように見てみました(図表6)。

図表6:シニアの旅行における「宿」と「食」
図表6:シニアの旅行における「食」と「宿」

 シニアでは、マップの中央に「食事」があるため、「食」が旅行の中心・象徴であることが推察されます。シニアにとって毎日の食事は「日常」の象徴であり、逆に旅行では、ご当地の美味しいものを食べるという行動が非日常感をより実感するのではないでしょうか。そのため、シニアの旅行では「食」体験をまずは重視しつつ、そこに付随して他の観光体験があることが窺えます。

 次に「宿」に着目してみます。若者では「ホテル」と「旅館」は近い場所に位置しておりましたが、シニアでは、「ホテル」と「旅館」は遠い場所に位置しており、明確に違うものとしてとらえられていることが窺えます。

 シニアにとって「旅館」は、“癒し”“ストレス発散”などと近い場所に位置しており、自分自身が楽しむための旅行の「宿」として活用されていると考えられます。一方で、「ホテル」では“家族との団らん”“記念日”“お金をかけたくない”“面倒”など、自分以外の人を楽しませる目的の旅行の「宿」として活用されていると考えられます。

若者とシニアの差異からの考察

 「食」と「宿」は両方とも非日常を体験できる旅行にとっての大事な要素ではありますが、若者とシニアでは以下のように意味合いが異なり、訴求ポイントも変わってきます。

若者にとっての「食」と「宿」

 宿泊先での食事を“旅行の食体験”と捉えていることが窺えます。そのため、ご当地の「食」が楽しめるなど、「食」が充実した「宿」が若者には選ばれやすいのではないでしょうか。また「旅館」と「ホテル」は宿泊施設として同義と捉えています。

シニアにとっての「食」と「宿」

 「食」が旅行の根幹であり、最も重視しているもののようです。また、「ホテル」と「旅館」は違うものとして捉えており、「ホテル」は自分以外を楽しませる目的の旅行時に、「旅館」は自分自身が楽しむ目的の旅行時に活用していると考えられます。そのため、シニアに対して「宿」の訴求をする際には、「ホテル」と「旅館」では訴求相手が異なります

旅行のビジネスチャンスをみつけるために

 これらのアイデアや考察は、「旅行」というテーマでフラットにワークショップを実施した結果の一部です。旅行といっても様々な業態が存在し、業態にマッチした施策を考える必要があります。今回ご紹介した旅行ニーズセグメントや自主企画調査を起点とし、ターゲットをより深く理解するような定性調査や特定領域の実態把握、コンセプト策定のためのワークショップなど、最適な手法を組み立てることで新しいビジネスの実現につながるのではないでしょうか。

【調査概要】
■旅行に関する自主企画調査

調査手法:インターネット調査(定量調査)
調査対象:インテージ マイティモニター
全国18歳~69歳男女(母集団準拠配信)
調査時期:2023年12月18日(月)~22日(金)
標本サイズ:3,891s

■セグメント作成のための追跡調査
調査時期:2023年3月25日(月)~27日(水)
標本サイズ:2,804s

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この記事の著者

小島 賢一(オジマ ケンイチ)

株式会社インテージ カスタマー・ビジネス・ドライブ本部 副本部長

2002年インテージに入社。リサーチアナリストとして数多くのプロジェクトに携わり、中でも商品開発支援を得意とし、ワークショップなどのファシリテーションも務める。2018年よりインテージクオリスに出向し、定性調査全般の指揮をとりながらサービス開発に...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

矢口 翔太(ヤグチ ショウタ)

株式会社インテージ カスタマー・ビジネス・ドライブ本部 企画・分析4部

前職において、位置情報を活用した地方創成、観光および街開発に関連する企画・調査に約5年間従事。多くの地方自治体の観光や街開発における調査を手掛けてきた。インテージ社でも観光領域を中心とした、企画・調査を主に約4年間担当。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/06/13 09:00 https://markezine.jp/article/detail/45881

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