個人情報は不確実な時代の道しるべ
「脱皮できない蛇は滅びる」とニーチェは言った。インターネットが普及して30年近く経過した。日本経済の「失われた30年」と時期が重なる。これは、偶然ではない。ネットの普及と逆向して、高度経済成長期のビジネスモデルが崩れていった。いま、脱皮の時である。
ネットビジネスの中核は広告モデルだ。ネット広告費は、2019年の電通「日本の広告費」でテレビを超えた(参照:「ネット広告費初の2兆円超 テレビメディア広告費を上回る【電通 2019年 日本の広告費】」)。
テレビは、高度経済成長をリードしたビジネスの代表例だ。イギリスの知人の話では、英国BBC放送は電波を返上し、近い将来にオンライン事業者になるらしい。このことは、日本でも報道されている(参照:「遅延もはや地デジ並み、「NHK同時配信、BBC電波返上」議論の裏に映像配信の急速進化」)。また、BBCウェブサイトが「BBCの受信料制度廃止」のニュースを取り上げている(参照:「英文化相、BBCの受信料制度廃止を示唆」)。テレビは、いま、脱皮の時である。
このAI時代、メディア環境激変、怒涛の技術革新の中、「確実なのは不確実性だけだ」と業界の知人が自嘲した。私はそれに対して、「一つだけ確実なものがある。それは、個人情報だ」と反応した。
経済活動は人間が行うもの。人間の消費と生産が必須だ。機械だけが生産し機械だけが消費活動をしても、人間は幸せにならない。経済の本質は人間である。個々の人間の活動が経済の基本要素であり、そこに必ず個人情報がある。その個人情報を有効活用する。まだまだ経済成長の余地がある。新しいビジネスモデルの余地もある。個人情報は今後も確実に重要だ。5年後も10年後も20年後も、確実に、確実性がある。個人情報は裏切らない。ここに不確実性はない。脱皮の道が見えている。