現時点の構造では、AmazonとMicrosoftが優位に
現時点の構造では、GoogleよりもAmazonとMicrosoftが優位である。なぜなら、単純に、3rd Party Cookie/Dataと3P媒体(他媒体)にビジネスが依存しないからだ。3P媒体には、TAC(Transaction Acquisition Cost)を払うため、利益率が悪化する。
また、GDPR以前の時代、Google Adsenseは3P媒体のための優良なサービスだった。しかし、最近は、MFA(Made-for-Advertising)で苦しんでいるし、効果も落ちたため、Googleにとっては微妙な存在だ。現状では、この3P媒体依存は、リスクもあるし収益性も悪い。

(注)「DSP費(10%)」などのパーセント表示は、仮に入れている。実際には、使用するシステムやデータ、契約条件などで変動する
図表1の「DSP費(10%)」「データ/ID費(10%)」「SSP費(10%)」の部分を「システム費」(配信システムとデータ/ID費用)としてまとめる。そうすると、旧来型の「レガシーネット広告モデル」の世界では、Googleなどのプラットフォーマーは、自社開発配信システムと自社1st Party Dataおよび3rd Party Dataを保持しているため、配信システムとデータ費用を圧縮できる。その圧縮効果で、この「システム費」が、たとえば、10%などになる。
その結果、一般的に、DSPベンダーよりも圧倒的に有利なコスト条件で配信できる。そのため、プラットフォーマーは、「運用バッファ(20%)」を持つ余裕が生まれる。これは、理論的には、市場の状況によって、意図的に変動させることができる。
たとえば、売上を増やしたいと思えば、状況に応じて、フロアープライス(最低入札価格)を上げる。そうすると、理論的には、CPM単価が上昇し始める。ある一定水準までCMP単価が上がると、広告主にとってのコストパフォーマンスが悪くなる。そのため、広告主離れにならないように、フロアープライスを徐々に下げ始める。DSPベンダーなど競合と比較して優位になるように調整していく。
これは、中央銀行が政策金利を調整するのに似ている。インフレ率、賃金、失業率などを睨んで調整するように、Googleの売上高や利益率などを加味して、理論的には、調整してきたはずだ。もちろん、「運用バッファ(20%)」をゼロ円にすることも、理論的には、可能だ。そして、いまでは、これを、AmazonとMicrosofがより優位に実現できる。リスクのある3P媒体に依存しない分、競合優位なコスト構造になっている。
私は、この「運用バッファ(20%)」該当部分、「データ配当金」のコンセプト、そして、データポータビリティ権をうまく使うことで、NHK受信料も「デジタル公共事業」として無償化できると考えている。NHKの視聴ログデータとGAFAMのデータを活用して広告配信をする、そして、データ配当金のコンセプトに基づいてキックバックをするのだ。