環境変化を構造的に整理し、消費ニーズを探る
現在、原材料費やエネルギー価格の高騰、物流コストの上昇などにより、国内のビジネス環境は厳しさを増しています。さらに中長期的に進行してきた、以下の要素もビジネスに大きな影響を与えています。
- 少子高齢化や景気停滞による市場の成熟化と商品やサービスのコモディティ化
- インターネットやSNSなど情報接点が増えたことに起因する所属コミュニティ、生活スタイルや価値観の多様化
- 地球環境の悪化による気候変動や自然災害の増加
- 緊迫する国際情勢や地政学リスクの高まり
- 新型コロナウイルスの影響で加速したデジタルトランスフォーメーション(DX)など社会の変化
これらの変化を見据えて新たなビジネスチャンスを見つけるためには、企業は高い解像度で生活者を理解してインサイトを掴むと同時に、参入市場の代替品・サービスを含めた広い視野で事象や変化を見渡す必要があります。さらに、変化の背景や原因を探ることで、事業やカテゴリへの影響を見越して、将来のニーズや消費行動の変化に対応する準備ができるようになります。
図表1は、前述した様々な環境の変化が参入カテゴリにどのような影響を与えるかを見通すときに使っているフレームワークです。背景情報を広く収集し、構造的に整理することで、多層的な生活者の理解に基づいた先読みができるようになります。
注目すべき5つの生活スタイル・価値観
この図でカテゴリのニーズや消費行動に直結している「生活スタイルや価値観」ですが、いま何に注目すべきなのでしょうか? 今回は、以下の5つの生活スタイル・価値観をピックアップしました。
- ウェルネス(心身の健康維持・増進だけではなく美容も)
- コスパ(支払った金額に対してどれだけ価値を感じたか)
- タイパ(費やした時間や手間に対してどれだけ価値を感じたか)
- 個人志向
- 希少性
「健康」は長年の関心事でしたが、今は「身体の健康だけではなく心身の健康を」という機運が高まっていると言われています。また、過去には「若者のコスパ意識」といったキーワードが聞かれていましたが、最近では「タイパ意識」も加わっている印象です。
また他者との関係性においては、コロナ禍で人と会えない時期を経て、婚姻数が減少し50万組を割り込んで戦後最少を記録しました。以前よりも内向的になり、個人志向が高まったという実感を持っている方もいるのではないでしょうか。
本記事では、これら5つの生活スタイルや価値観について、それぞれ誰の、どのようなニーズに紐づくのかを読み解いていきたいと思います。
なお、今回はインテージの消費者パネルSCI(※1)に協力している15~79歳の男女への定点アンケート『Profiler』のうち、400項目×男女の2012~2023年データをもとに、ベイズ型コーホート分析を使って、生活スタイルや価値観を構造化しました。この手法を使うことで、時系列データを見た時に混同しがちな「年齢」と「世代」の特徴を分解して知ることができます。
では、ここからは400項目からピックアップした5つの項目を具体的に見ていきたいと思います。