突飛な企画を生み出すことが目的になっていないか?
田部:尾澤さんは様々な企業において、マーケティングだけでなく、事業全体を見据えた経営にも携わってこられました。さらに、外部パートナーとしての役割も担っていらっしゃいます。これらの経験があるからこそ見えてきたものがあれば、お聞かせいただけますか?
尾澤:どのようなポジションに就こうとも、常に「ビジネスに貢献すること」を念頭に置いています。この視点を見失ってしまうと、結果として施策がぶれてしまいます。売上に直結しない、事業の拡大に直接寄与しないゴールを追求することになりかねません。

田部:時々、突飛な企画を生み出すことや、競合他社に追随することが優先され、会社の強みを伝えることや、売上に直結する施策が二の次になってしまうケースがあります。このようなケースの背景を紐解くと、往々にしてKPIに売上が組み込まれていないんですよね。
また、広告代理店への丸投げが常態化し、提案された企画の採用判断がマーケターの主な仕事になってしまっていることも一因としてあると考えます。代理店側は最終的な売上や利益の成長に責任を負っていないため、突飛な企画を提案したくなるんです。これらの要素が複合的に作用し、最終的なゴールが売上に設定されていない状況が生まれているのでしょう。
尾澤:リーダーが個人のKPIを事業全体のKPIと連動させ、人事評価に反映させることが必要だと考えます。このような仕組みがなければ、本人も自身の役割や成長の必要性に気づかない可能性があるためです。広告代理店からの提案を判断するだけで十分だと考えてしまえば、個人の成長意欲も低下し、適切な判断を行うために必要な知識を積極的に学ぼうとしなくなります。
田部:数字を分解して分析し、コントロール可能な要素と不可能な要素を区別して、コントロール可能な数字を個々の施策やミッションと適切に紐付けて提示することが大切ですね。数字と人、どちらかの要素が欠如すると、結果として「努力しても成果が上がらない」という状況に陥る可能性があると思います。最後に、尾澤さんの今後の展望をお聞かせください。
尾澤:単なるマットレス販売企業ではなく、睡眠のスペシャリストとして、より幅広い顧客ニーズに応え続けたいです。D2Cモデルを基本としながらも、お客様との接点を増やす目的で、量販店での販売を昨年から開始しました。加えて、宿泊施設での設置にも注力しています。事業が拡大するにつれ、一定数の返品が発生することは避けられません。そのため、廃棄をゼロにする取り組みなどを通して、地球・人間・動物・環境全体に優しいブランドを目指していきます。