実は顧客のことをよく知らない可能性はないか
――最後に、マルチブランド戦略を実践するためのアドバイスをいただけますか。
弊社では10年培った汎用的かつ柔軟なデータ入力インターフェイスという資産があったのでマルチブランド戦略を取りましたが、一長一短があり、すべての企業におすすめできるわけではありません。一方で、カニバリゼーションについてもよく聞かれますが、実は顧客のことをよく知らないのかもしれません。顧客解像度を高め、鮮明であればあるほど、明確に市場セグメントとターゲティング、コミュニケーションや販売チャネルを分けることで市場での喰い合いは低減できると思います。
当社の場合、「アンケート」や「サーベイ」というカテゴリーではなく、「BtoB」という企業セグメントで「マルチチャネルフォーム」という新たなカテゴリーのブランドとしてコアターゲットを絞り展開しました。既存ブランドを継続販売しながら、コストを抑えて段階的に新ブランドの併売展開をしたところ、大きなカニバリゼーションは起きませんでした。
役割や職種にとらわれずに顧客の声を聞くことが、事業成長のきっかけを作る上で多くの企業にとって非常に重要だと思います。
最後に、これはマルチブランド戦略だけに当てはまることではありませんが、私は、この1年を通して改めてマーケティングは全社員で取り組むべきなんだと実感しています。全員が同じ方向を向くと、組織としての意思決定や選択と集中が容易になります。結果的にビジネスのスピードが加速して強烈に生産性を上げられます。これからも、全社員による顧客理解とマーケティングを実践していきたいです。
