ヒット商品に見られる「3パターンの検索数推移」
一つ目は、少しずつ検索ボリュームが増加していく「じわじわ型」です。このタイプは口コミなど、商品そのものの良さで検索数が長期間かけて徐々に増えていくのが特徴的です。
二つ目が、比較的短期間のうちに検索数が増加する「急上昇型」。これは、テレビやニュース、SNSなどで短期間に何度も話題になることで、検索数も急上昇するのがこの型です。これは「じわじわ型」と比較して捉えるのが難しい上に、急上昇後にそのまま上昇を維持し続けるというのが難しいケースが多いという特徴があります。
そして三つ目が、なんの前触れもなく検索数がピークに達する「垂直上昇型」です。これは1週間も満たない超短期間で検索ボリュームがピークに達し、その後は検索ボリュームが激減するのが特徴です。たとえば2021年に流行った招待制SNS「Clubhouse」はまさにこのパターンでした。
我々は、この三つのうち「じわじわ型」と「急上昇型」の二つをDS.INSIGHT Trendの対象にしています。ピックアップの方法としては、検索ボリュームの多いキーワードを「お菓子」「ファッション」といったカテゴリーに分類した後、その中でスコアや検索ボリュームの波形が特徴的なものを参考にして選出しています。
ヒットの鍵は「コミュニティの外にいかに浸透させるか」
━━ヒットの過程にもパターンがあり、それぞれの検索数の増減には波があるのですね。こうしたデータ分析を踏まえ、商品やサービスのヒットに向けて企業が意識すべき点を貴社はどう考えますか?
商品やサービスがヒットに至るまでには、四つの過程が必要になると考えています。まず、ターゲットが商品やサービスのことを知る「認知」の段階があります。次に、実際にその商品・サービスが自分と結びつく「きっかけ」の段階があります。そして実際に商品・サービスを「体験」し、他の人にそのことを伝える「拡散」の段階になります。この拡散で回ってきた情報を別の人が「認知」する。このサイクルが回り始めると、ターゲットが属するコミュニティ内で商品・サービスが浸透していきます。
また、このサイクルを繰り返すと、ターゲットとは別の世代や属性の人たちにまで拡散されることがあります。この「コミュニティ外への伝搬」が発生すると、商品やサービスがどんどん広がっていく状況になります。これが、いわゆる“ヒット”の状態を生み出す一つのパターンだと思います。これがさらに拡大すると、今度はその商品・サービスが同ジャンルにおける「第一想起化」へとつながり、最終的には「コモディティ化」へとつながっていきます。
たとえば「鬼滅の刃」は、最初のうちは若い世代に検索されていましたが、その後30代から40代からも検索されるようになり、大ヒットにつながりました。
ヒット商品に見られる検索数推移の傾向としては、「On」のスニーカーの事例がわかりやすいと思います。同商品は、SNSやテレビ、ニュースなどで定期的に取り上げられました。そしてその度に話題の急上昇が起きる。それにともない通常検索数のベースラインが上がりました。
このように実際にヒット商品に結びつくかどうかは、適切なタイミングで関心を集めて検索数を増やし、それを繰り返すたびにじわじわと検索数のボリュームを増やせるかという観点も一つのパターンとして重要になると思います。