検索連動型広告はメーカーと消費者、どちらにも有益
――国内でも最近リテールメディア広告が注目されています。山崎さんは以前から「リテールメディア広告の時代が来る」と発信していましたが、現状をどのようにご覧になっていますか?
私は10年ほど前から「ECサイト内検索連動型広告の時代が来る」と発信してきました。
長らく様々なリテールECサイトを持つ企業の方にも「検索連動型広告は高い効果が期待できますよ」と説明していましたが、残念ながら当時はRTB広告などが盛んで、あまり注目されませんでした。
――山崎さんはリテールメディア広告の中でも特に「検索連動型広告」の重要性を訴えていますね。その理由は何ですか?
メーカーと消費者の両者にとって有益であり、かつ高い効果が期待できるものが検索連動型広告だからです。
ECサイトに滞在しているユーザーというのは、欲しいものが明確で購買意欲が高く、言ってみれば「カスタマージャーニーの終盤」にいる人たちです。ユーザーがECサイトで検索しているタイミングで出す広告は、メーカーから見れば“あとひと押しをするチャンス”であり、競合他社にとって見れば“翻意を促すチャンス”なわけです。
また、旧モデルの商品をカートに入れているユーザーに対して「今カートに入れているものは旧モデルで、新モデルはこちらにありますよ」と広告で知らせることもできますし、ユーザーも「型落ちで価格が安い旧モデルを買うか、最新モデルを買うか」と選択する余地が生まれます。
検索連動型広告とは消費者自身が「自分は今、この条件で商品を探しています」と発信した情報を活用して提案できる広告なのです。
検索連動型広告と相性が良い分野とは?
――ECサイトを運営するリテール企業にとっては収益構造の充実化が期待でき、広告を出稿するメーカーにとっては高い効果が期待できる広告が検索連動型広告なのですね。効果が発揮されやすい事業分野があれば教えてください。
購入可否の判断基準に商品の機能性が関与する分野と検索連動型広告は相性が良いと考えています。スポーツ用品、家電、DIY用品などが例として挙げられます。
「速く走れるシューズ」「5合炊きできて高性能な炊飯器」「使いやすい工具」といったように求める機能が明確で、その条件の中で良いものを選びたいと考える分野と、検索連動型広告は相性が良いのではないかと思います。
一方、「この商品を使うことでこう見られたい」というイメージや嗜好性で訴求している、たとえばアパレル・美容といった商品の場合は、商品を買うこと自体で満たされる楽しみがある分野なので、別のやり方があるでしょう。ただ、最近はこのような分野でも骨格やパーソナルカラーの診断を参考に商品を選ぶケースもありますよね。そのような、自分に似合うものを求める方々に訴求したい場合も検索連動型広告が活きてくるでしょう。