Telescope活用でメディアとクリエイティブの注視データを可視化
MarkeZine編集部(以下、MZ):2023年、オプテージでは同社の展開する携帯電話サービスである「mineo」のテレビCM(以下、CM)プロモーションを約2年半ぶりに再開しました。同プロモーションの概要についてお聞かせください。
林:mineoでは、「パケット放題 Plus」という基本プランに月額385円をプラスするだけで最大1.5Mbpsでデータ通信が使い放題になるオプション(混雑回避のために3日間で10GB以上利用時は速度制限あり)を提供しています。
林:これまでは情報感度が高い人、いわゆるアーリーアダプター層を中心にmineoをお選びいただいていました。しかし最近では、スマホの契約変更による通信費節約が一般的になってきたため、「スマホにあまり詳しくはないが節約意向は高い層」に向けて幅広くアプローチを行う必要が生じました。
そこで、今回のCMでは、同オプションの訴求とSIMカードの差し替えのみで手軽に利用できるという“使い勝手の良さ”の認知拡大を目指してプロモーションを行いました。
MZ:プロモーションの主なターゲット層について教えてください。
林:「何かしらのライフイベントが起こり、家計見直しの必要性を感じている方」を主なターゲットとして想定しています。例を挙げると、家族構成の変化にともない節約や家計の見直しを行いたいと感じている方や、定年を目前に固定費削減に関心がある方などです。
MZ:今回、オプテージではREVISIOが提供する「Telescope」を活用してCM効果測定やプランニングを行ったとうかがいました。まず、Telescopeについて教えてください。
小坂:Telescopeは、自社CMや競合CMの注視データをメディアとクリエイティブ両方の側面からリアルタイムで可視化できるWebツールです。
小坂:特長の一つとしてUIの良さが挙げられます。非常にシンプルな管理画面で直感的に使えるので、初めての方でも簡単に使用可能です。実際に林さんも導入後1日で様々な機能を使いこなしていました。
注視データの活用により放映期間中にPDCAを回す
MZ:Telescope導入の背景をお聞かせください。
林:当社のようなサービスは、消費者が比較検討を行ってから購買行動に移るまでに時間を要するため、CM視聴後すぐに購入には結び付きません。そのため、CMの反響や効果がタイムリーに出てきにくくリアルタイムでの分析ができないという課題を抱えていました。実際今までは、放映期間が終わった後にアンケートで認知度を調査し、リフトアップを確認するという放映期間中のPDCAへの活用が困難な手段でしか計測できていませんでした。
そこで、私たちは注視データが確認できるTelescopeを導入しました。一般的にCM放映中は、「一定期間中に放映したCMの視聴率の合計」を表すGRP(Gross Rating Point)を参考に放映素材の割り当てを行うことが多いです。しかし、Telescopeでは注視のユニークリーチを追跡できるため、実際にCMを注視していた人の含有率や潜在顧客数の増加率などがリアルタイムで把握できます。そのため、注視データ次第では注視率が低い素材から高い素材への差し替えや注視率が高い世代向けの素材を割り当てるなど、放映期間中にPDCAを回せるんです。
プロモーションの予算は無尽蔵ではありませんし、ましてCMには膨大なコストがかかります。それだけ大きな投資にも関わらず、運用結果は蓋を開けてみないとわからないというのでは、社内の理解もなかなか得られません。Telescopeを使えばCMもWeb広告と同様にPDCAを回せますし、本当に注視したかどうか確認できるので正確に広告効果を測れると考えました。
枠ごとの注視データで“視聴率に頼らない枠選定”が可能に
MZ:今回のCM施策において、REVISIOは具体的にどのような支援を行いましたか。
小坂:当社では、関東エリアと関西エリアで注視データを収集しているのですが、今回の施策では、注視データの提供は両エリアとも行いながら、関西エリアではCM枠のバイイング~結果のレポーティングまで一気通貫でサポートを行いました。
特にmineoさんには、CM枠のバイイングにおいて注視データを効果的に活用いただけました。具体的に説明すると、注視データを活用して注視のユニークリーチが最大化する枠のパターンをシミュレーション。放送局の選定と予算の配分をご提案しました。そして局発注のフェーズでは、各CM枠の注視度合いをA〜Eの5段階で可視化した「注視の5段階ヒートマップ」を作成し、放送局および広告会社の担当者とシェアしました。小坂:こうすることで、CM枠自体の注視率を根拠に放送局の方との交渉が可能に。「Bランク以上に60%」といった具合で放送局に対してご要望をお伝えした上でCM放送プランを作案いただけるようになりました。また注視度Eランクの枠や、絶対に入れて欲しくないという放送枠を回避枠として個別に設定も行いました。
ですが、放送枠をすべてこちらの希望どおりに設定してもらうことは難しく、回避枠にもスポットCMを入れられてしまうことも多々あります。その場合は都度林さんと連携しながら代替案を作成し改案交渉を行いました。
放送枠確定後は、枠ごとの使用素材を決める段階でも注視データを基に割り当ての提案をしています。今回、mineoさんではターゲットに合わせて四つの素材を準備していたため、確定した各放送枠でのターゲット層ごとの注視率を確認し、視聴者層に合わせて素材を割り当てました。そして放映後は、mineoさんが今後の施策に役立てられるように、REVISIO独自の分析軸でレポートをしました。
林:通常、CM枠の購入はGRPベースで行いますが、視聴率が高いからと言ってCMも注視されているとは限りません。
合計のGRPが同じであればコストは同じですが、視聴率は高いもののCMの注視率が大きく下がる枠に1本放映するよりも、視聴率は低くてもCMの注視率が下がらない枠で1本でも多く放映したほうが、効果的なプロモーションにつながります。このように、注視データを活用することで、質の高いGRPを確認しながらプランニングが行うことができます。
注視率向上で検索効率も前回比で約3倍に
MZ:今回のCMキャンペーンで得られた成果を教えてください。
林:今回のCMの訴求ポイントの一つは、2023年2月時のCMと同じ「1683円で1.5Mbpsのデータ通信使い放題」なのですが、2023年2月は注視率の全CM平均値に対してスコアが約10%低かったのに対し、今回の注視率は全CM平均値相当まで改善。指名検索数で見ても2023年2月比で約1.5倍まで伸長しました。
林:ちなみに指名検索数で見た効果は、2023年2月時の素材でも悪くはありませんでした。しかし、REVISIOさんから「注視観点での伸びしろ」を数値とともにご掲示いただいたことで改善の必要性を感じ、マイナーチェンジに加え、さらに別訴求のクリエイティブを作成しました。
別訴求のクリエイティブでは「SIMを取り替えるだけ」といった「手軽さ訴求」の要素を追加しました。こちらでは、注視率は全CM平均値よりも約5%高くなり、指名検索数も2023年2月比で約3倍になりました。このように注視が増えることと、興味を持って検索してくれる数が増えることには相関があることを実感しました。
F1層の注視含有率が全CM平均比の+78%に
小坂:注視含有率の上昇も今回のCM施策の大きな成果として挙げられます。なお、注視含有率は、電源が入っているテレビのうち、テレビ画面が注視されている台数の割合を属性ごとに出したものです。
一般的にCM施策において、テレビの視聴時間が短い20〜34歳女性のF1層と35~49歳男性のM2層を対象に効果を上げるのは難しいとされています。実際、関西エリアにおいて、全CMの注視含有率の全CM平均値がF1層では3.6%、M2層では7.2%でした。
それに対して、今回のmineoさんのCMでは、F1層が6.4%となって全CM平均比が+78%に、M2層が8.1%で全CM平均比が+13%となり、大幅に全CM平均値を上回りました。
これは、放送枠と素材のマッチングを年代ごとの注視データを基に徹底的に行った成果だと考えています。
林:今回の結果から、注視データを活用することで、Web広告よりもテレビCMのほうが高い精度でターゲティングが行える可能性を感じました。なぜならWeb広告だとターゲティングにアカウントの登録情報を使うため、家族間でデバイスを共有している場合はログインした人向けのターゲティングとなり、登録者の属性と実際の接触者の属性がまったく異なることも多々あります。一方、REVISIOさんの注視データは人体認識技術を使って独自のパネルから実際の視聴者属性と注視の有無を判断して収集しているデータなので、精度高く割り当てできていると思います。
客観的な指標でコスパの良いバイイングが可能
MZ:定性的な成果についてもお聞かせください。
林:注視データを軸にしたCM枠のプランニングにより、広告主である当社にとっても放送局にとってもWin-Winなバイイングが行えたと感じます。
通常、CMの放送パターンでは、平日の19〜23時および土日の全時間帯に放映する「逆L字型」や、逆L字に朝6時〜9時の時間帯を加えた「コの字型」が人気です。しかし、今回は注視データを基に当社に最適な番組を選択したため、「逆L字の中の番組よりも、平日日中のこの番組に3本入れてください」など、通常であれば選ばれないような時間帯の枠を、注視データという客観的な指標を根拠として取りに行くことができました。
人気ではない枠は、他の枠と比べると局交渉も容易です。注視データのおかげで、mineoにとって最適な枠を買い付け、最適なクリエイティブ素材を割り当てることで、コストパフォーマンス良くCM放映できたのは大きな効果だと感じています
MZ:今回の成果を受けて今後どのような取り組みを進めていくのか、構想をお聞かせください。
林:クリエイティブの1秒ごとの注視分析と、枠の注視データをバイイングに活用する取り組みは今後も継続していきたいと思います。
また、新たなチャレンジとしてCTV広告への活用を考えています。従来の認知プロモーション設計では、地上波CMの指標はGRP、CTV広告の指標はインプレッションとされてきました。しかし、REVISIOのデータを活用することで、CTV広告も地上波CMもアテンションユニークリーチ(※)という共通指標で成果を測れるようになるのではと考えています。この仮説の下、今後はCMとCTVを融合し、最適な予算配分を検討する取り組みを進めたいと考えています。
小坂:当社では、これまで注視にフォーカスしてサポートを提供してきました。今後も引き続き注力しますが、一方でこれからは見られた「後」の部分、つまり、検索行動やWebサイト訪問などの行動に視聴がどうつながるかを分析したいと考えています。広告主が重要視する興味率の向上に、CMがどれだけ貢献したのかを明らかにしていきたいです。林さんからリクエストいただいている地上波とCTVを横断した注視分析につきましては、弊社が今まさに力を入れているフィールドになりますので、全力でサポートさせていただきます。
※アテンションユニークリーチ(A-UR):該当企業のCM放送時に少なくとも1回以上接触した(=テレビ画面を向いていた)人の割合
今回の事例で実際に活用されたツールをチェック
オプテージ様が活用したテレビCM効果検証・改善ツール「Telescope」では、注視データを基に、地上波テレビとCTVキャンペーンの横断での分析も可能です。詳しくはサービスサイトで詳細をご紹介していますので、本記事とあわせてご覧ください。