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第105号(2024年9月号)
特集「Update:BtoBマーケティングの進化を追う」

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【特集】Update:BtoBマーケティングの進化を追う

NTTコミュニケーションズはなぜ全社をあげて戦略を実行できるのか?「BtoBマーケ5つの戦略」の裏側

BtoBマーケティング「5つの戦略」概要

MarkeZine:続いて、それらの課題に対してとられている戦略について教えてください。

戸松:では、現在実行している「5つの戦略」をご説明していきます。

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1.統合マーケティングボード:新しい会議体を作り、中長期の注力事業を検討

 現在、NTTコミュニケーションズでは、「統合マーケティングボード」という会議体を設置しています。デジタルヒューマンや生成AIなどの新しいテーマを事業戦略にどのように組み込んでいくかを検討するためのもので、これには中長期的な視点を補強する目的があります。

 ここで大切にしているのは、個々の事業責任者の見識や能力に過度に依存せず、フラットにマーケットに向き合う仕組みを作ることです。たとえば、生成AIに詳しい人とそうでない人では、同じ土俵で議論しても公平な結果は得られませんよね。そこで、顧客ニーズを探索する初期段階では、詳細なマーケティングリサーチを導入し、その結果をもって参加者全員の知識レベルを揃えることから始めています。

 その上で、それぞれの注力事業を検討の進捗度に合わせてゲート管理し、事業ポートフォリオに落とし込んでいきます。その合算が中期で目指す収益レベルに達するのかをマネジメントする形です。

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2.事業共創プログラム「OPEN HUB for Smart World」

 先ほど2つ目の課題として、顧客企業のLOBとの繋がり不足を挙げました。この繋がりを作っていこうとなると、従来の営業とは異なるアプローチが必要となります。そこで立ち上げたのが、様々な業界のお客様と事業共創活動に取り組む「OPEN HUB for Smart World(以下、OPEN HUB)」です。

 OPEN HUBでは、オウンドメディアやコミュニティ、事業共創プログラムなどを展開しています。今日お越しいただいたこちらのフロアは、まさに“共創の場”として社外の皆さんにオープンにしているスペースなんですよ。

 このようにご紹介すると、オープンイノベーションプログラムのように見られることもあるのですが、OPEN HUBはあくまでNTTコミュニケーションズのBtoBマーケティングの一環として行っているものです。ですから、このフロアの来訪者の数や属性もKPIとしてウォッチしており、OPEN HUBの共創プログラムによって顧客企業のLOBの方々と関係を構築していけるようになっています。

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 プログラム化することで、新規事業の領域でも個人の能力に左右されず、質の高い安定したコミュニケーションを組織的に行うことができる点もポイントですね。

3.デジタルマーケティング戦略

 お客様の新規開拓、ホワイトスペースの開拓においては、デジタルマーケティングの手法を取り入れています。対象となる顧客の数が多い一方で、投入できる営業リソースは限られており、デジタル技術を効果的に活用する必要があるためです。ただし当社ではABMを採用しているため、デジタルに偏り過ぎることなく、従来型の紙のダイレクトメールなども、ターゲットを絞って活用しています。

 ポイントは、日々の業務の中で自分が担当する顧客以外にも目を向けられるように、デジタル技術を活用して新規開拓の機会を創出すること。これを可能にするため、従来のデジタルマーケティング手法に、自社開発のツールを組み合わせて活用しています。

 たとえば、ある営業担当者が飲食チェーンを担当しているとしましょう。別チームの同業種担当者が好条件の商談をまとめた際、そのノウハウが共有され、「同じ業種の案件が成立したので、参考にしてはどうか」といったレコメンドが自動的に行われるシステムを構築しています。

 他にも、既存顧客向けに現在ご利用いただいているサービスの利用状況を分析し、クロスセルやアップセルを図れる兆しが見えたら、システムからその情報が自動的に共有される、というようなシステムもあったりします。

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4.セールスイネーブルメント

 BtoBの場合、顧客接点として最も重要な情報を持っているのは営業担当者です。しかし、大半の企業が「営業担当者によるデータ入力が進まない」という課題に四苦八苦している印象があります。そのような中、我々は営業担当者のデータ入力を徹底しました。結果、年間50万件以上の活動履歴や商談の履歴が記録されるようになっています。

 営業担当者にデータ入力を促すために行ったのは、「個人ではなくチームのために」というマインドセットの変革です。要は、「自分がデータを入力しないと、チームとしての顧客情報の可視化を妨げてしまう(足を引っ張ってしまう)ことになる」というように、評価の単位をチーム軸にするわけですね。

 この文化が浸透していくと、顧客情報がデータ化され、最終的には経営層まで情報が行き渡るようになっていきます。我々は、数千社の顧客の状況が360度ビューで見えるダッシュボードが自動生成される仕組み「カスタマーヘルススコアカード」を持っていますが、これは現場メンバーのデータ投入貢献に支えられているのです。

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5.人材育成と発信

 最後に、人材育成・強化に関しては、2つの取り組みを行っています。

 1つは、スキルセットの可視化に向けた施策です。当社には、現在約900人の専門家がいますが、デザイン・技術・ビジネスプロデュースなどすべての分野に精通している人材は稀少です。

 そこでビジネスプロデューサー、エンジニア、デザイナーなど一人ひとりの職種と専門分野を明確にしました。それらの役割と専門性に基づき、スキルレベルをカタリストという制度でランク付けしています。たとえば、デザインに秀でており、対外発信能力が高く、顧客の事業プロセスを深く理解してプロジェクトを推進できる人材は高いティアに位置付けられます。一方、知識はあるが経験が浅い人材は中間のティア、座学のみの新人はエントリーレベルとしています。

 このようなランク付けに応じて、トレーニングやOJTなどの育成プログラムを提供しています。

 また、社員の対外発信も積極的に推進しています。特にBtoBビジネスにおいては、ターゲット顧客に対するセールス担当個々のプレゼンス向上が重要であり、企業としての信頼性向上にもつながっていきます。昨年だけで、160名もの社員が社内外のメディアに露出しています。


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「5つの戦略」を最初から綺麗に描けたわけではない

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この記事の著者

和泉 ゆかり(イズミ ユカリ)

 IT企業にてWebマーケティング・人事業務に従事した後、独立。現在はビジネスパーソン向けの媒体で、ライティング・編集を手がける。得意領域は、テクノロジーや広告、働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/10/15 09:30 https://markezine.jp/article/detail/46895

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