“リタイア後の楽しみ”から“人生を豊かにするための旅”へ
──長年アクティブなシニア層をターゲットとされてきた中で、シニアのインサイトや取り巻く環境などの変化を感じることはありますか?
本室:前提として、「シニア層」は非常に幅広い範囲を指すため、一括りにはできないものと考えていますが、昨今、「大人の休日倶楽部」会員の中での変化は感じていますね。
たとえば、これまで満65歳以上を対象とした「大人の休日倶楽部ジパング」は、定年退職後の楽しみとして活用いただくイメージでした。しかし、昨今はシニアの就労形態も多様化し、満65歳以上で働くことも一般的になってきましたよね。まだまだ現役で活躍しながら、徐々に働き方をシフトチェンジし、自分のライフスタイルを見つめ直される方が多いのではないでしょうか。自分のスタイルを模索しつつ、人生をより豊かにする暮らし方を模索していらっしゃる方が、「大人の休日倶楽部」に入会されている印象です。
──いわゆる「リタイア後に老後を楽しむ」という雰囲気ではなくなってきているのですね。
本室:はい。「人生100年時代」と言われる中ですし、50歳でもまだまだ折り返し地点ですからね。会員限定イベントで80代、90代の方をお見かけすることもありますが、本当にみなさん勢いがあって、「これから○○へ出かけるのよ!」と楽しそうにお話しされています。少なくとも「大人の休日倶楽部」のシニア層には、「リタイア」という言葉は似合わなくなってきていると思います。
──ターゲット層の変化に対して、サービス内容を調整することもあるのでしょうか?
本室:会員向けカルチャースクール「趣味の会」では、平日の日中の講座だけでなく、仕事帰りに立ち寄れるような時間帯の講座を増やしていけるよう調整中です。今後も働きながら趣味を楽しむシニア向けのサービスを開拓していきたいと考えています。
「シニア=ITが苦手」は古い? かしこい旅が得意なシニア層
──「大人の休日倶楽部」会員の旅の楽しみ方には、傾向や特徴がありますか?
本室:みなさん「かしこい旅」が得意ですね。年末年始やゴールデンウイークを避け、平日の空いている時間を狙ってお得に旅する方が多い印象です。また、フリーきっぷ「大人の休日倶楽部パス」の使い方も上手で、5日間連続で移動するのではなく、日帰り旅や帰省、お友達との旅行などをいくつか組み合わせながら、無理なくゆったりと活用されている傾向が見られます。
なお、「大人の休日倶楽部パス」はJR東日本のネット予約サービス「えきねっと」で購入することで1,000円お得になるため、ネットからの購入割合も高いです。「シニア層はITリテラシーが低い」と思われがちですが、必ずしもそうではありません。積極的に「えきねっと」を使いこなす方の割合は、年々明らかに増加しています。
──「シニアはITが苦手」という世間一般のイメージも、改めるべき時代かもしれませんね。「趣味の会」での傾向もありますか?
本室:「学び」や「健康」といったテーマが人気ですね。いわゆる「ウェルビーイング」と呼ばれるような、健康に楽しく人生を過ごすことがテーマの講座は、みなさんとても関心を持たれている印象です。
──ちなみに、「旅行×シニア」の文脈でサービス展開されている「大人の休日倶楽部」は、新型コロナウイルスの影響を大きく受けたのではないかと推察します。コロナ禍から今までの状況はいかがでしょうか?
本室:コロナ禍が始まったタイミングから、如実な変化がありました。シニア層は一番早く旅行の取りやめが始まった世代であり、ニュースの情報にも非常に敏感に反応しますので、そこからの回復は時間がかかりましたね。コロナが5類に移行してからは、これまで我慢していた反動もあってか、シニア層の旅行ニーズが高まってきました。割引きっぷを使ったり、イベントに足を運んだりする方が増えてきていますので、回復の手ごたえを感じています。