ビジネスの流れ全体を把握し、広い視野を持つ
SaaS企業を中心にSalesforceが生み出した「THE MODEL」理論によってマーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスといった部門に分業化されているケースも多い。しかし、この理論を表面的に捉えるだけで分業化され過ぎてしまっている企業が多いと池田氏は指摘する。
分業化された縦割りの中でスキルセットを磨いても、最大出力は部門の業務に最適化した範囲にとどまってしまう。部門ごとに設定されたKPIとKPIの間にある壁に、色々なボールが落ちてしまっている。そのボールを拾うスキルが一番重要だ。
「BtoBマーケティングはビジネスの流れを理解し、視野の拡張を意識することが非常に大切」と池田氏は語る。

自分の担当している部門の前工程と後工程を把握している必要がある。そして、全体の出力を上げるマーケティングのプランニングを目指したいところだ。しかし、分業化は自分の担当範囲に集中しすぎて俯瞰を阻む。これが一番の問題であり、マーケターが自覚的になる必要がある。
スコアリングとナーチャリングは非現実的?
登壇者の3名が意気投合した話題が「いわゆるナーチャリングのような顧客育成は現実的でない」ことだ。ホワイトペーパーを作成する、セミナーに参加してリード獲得するといった施策に目を向けるよりも、自社が顧客に貢献ができることは何かを再度洗い直すことが非常に重要だという。
BtoCの不動産や車といった買い回り品と同様に、BtoBにおいてもニーズも波がある。そして、その波の最高潮時に自分たちを思い出してもらえるかは、どのようにKeep In Touchしていくかがすべてだ。なんとなく好意を抱く状態とは、どれだけリーセンシー(間隔)を短く、フリークエンシー(頻度・回数)高く、見込み顧客とつながっていられるかが鍵となる。
「BtoBマーケティングは家電のマーケティングと近い。家電はキャンペーンやプロモーションを頑張っても、顧客が使っている商品が壊れない限りニーズは顕在化しません。それが来年なのか3年後、5年後なのかわかりません。我々マーケターがやるべきことは顧客のニーズが顕在化したときに『あそこに相談してみよう』と想起してもらうことなのです」(池田氏)

現在、ニーズが顕在化して最初にとる行動は検索だ。たとえば、引っ越したい時に「大阪 2LDK 賃貸」と検索するか、物件プラットフォーム名のどちらで検索するかで既に勝負はついている。これは、BtoBでも同様だ。
ゆるく浅くずっとつながっていることが重要である。それにはSNSやテレビCMといった施策があり、その組み合わせが重要だと池田氏は解説する。BtoBの場合は、顧客に役立つ情報を提案し続けることでKeep In Touchできる。だからこそ、自社の一体何が顧客にありがたがってもらえるかポイントなのかを整理し直すことが、最も本質的な施策となる。
池田氏はセオドア・レビット氏の「ドリルの穴理論」を例に出し、顧客はドリルが欲しいのではなく穴をあけたいのと同様に。ツールを導入することで何を実現したいのかをしっかりと把握した上で商談することが重要だと語る。
しかし、BtoBマーケティングは顧客の課題解決に対して「ツール至上主義」である印象が強いと池田氏と安藤氏は指摘する。リードを集めMAを使ってスコアリングをしていけば商談につながると考えがちだという。だが、マーケティングには様々な役割を持つ施策がある。1つ実行したら一発で解決できるものはない。それらの施策を組み合わせていくことが大切なのだ。