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MarkeZine Day 2024 Autumn

ユーザーが“自ら集まる”自社メディアを作るには?動画総再生回数800万超のミツカンの施策から学ぶ

共通IDの導入でOne to Oneのコミュニケーションを創出

 同社では、自社メディアのコンテンツと機能を拡充することでその価値を向上させた。具体的には、トレンドになっている料理のメニューをゲーム形式で紹介するインタラクティブなコンテンツや、ユーザーの好みに応じたポップアップメッセージ機能の提供などが挙げられる。

 これらのコンテンツや機能を提供する上で特に重要になったのが、共通IDの導入だ。これにより同社は直接顧客情報の確認が可能に。顧客の解像度が上がることでよりパーソナライズしたコミュニケーションが行えると林氏は語る。

 加えて同社では、ミツカンの商品や考え方に対して特に強く共感してくれている顧客を中心としたファンコミュニティも設立。商品開発に関する意見を募ったり、コミュニティサイトを通じて食事の悩みに寄り添うコンテンツを提供したり、UGC投稿を促したりと、顧客とのより密な関係を構築している。

 だが、自社メディアで既存顧客とのつながりを深めるだけでは、調味料を中心とした既存顧客の食事スタイルからの多様化に向き合い切れないという。そこで、第二の戦略として多様化する顧客へ「拡張」するアプローチ、つまり、新たな層を自社接点におけるコミュニティ参加などの持続的な関係構築へといざなうため、新たな拠点の創出に注力しているのだと林氏は語る。

SNSでのリーチ数が約11倍に!悩みに寄り添ったコミュニケーション

 その接点づくりの成功例が、Z世代へのアプローチの一環として行われたポップアップショップ「凹メシ食堂」だ。凹メシ食堂では凹んだ人を元気にし、心の健康を実現するための無料で食事を楽しんでもらうことを目指している。

 同プロジェクトに関して林氏は、「商品販売やレストラン事業が目的ではない」と強調。同ポップアップショップでは、来店者が「最近凹んだエピソード」を書くことで食事が無料で提供される。あくまでもZ世代との接点を持ち、彼らを“癒すための場所”として開いたのだ。

レストラン事業や商品販売を目的としないポップアップショップ「凹メシ食堂」

 Z世代向けの施策として同社が同プロジェクトを実施した理由について、林氏は次のように語った。

 「これまで当社では、高年齢層を中心に血糖値や中性脂肪などの悩みを解消する機能的な提案を行ってきました。しかしZ世代で同様の悩みを抱えている人は多くありません。代わりに『同調圧力』『将来への不安』といった情緒的な不安を抱えている人が多いんです。そこで『凹んだらご飯を食べよう』というテーマで心の健康問題の解決を提案することで、彼らとのコミュニケーションを図り、共感の獲得を目指しました」(林氏)

 この凹メシ食堂は2024年9月時点で計2回開催。2022年12月に開催された1回目のイベントでは、参加者の約6割が20代以下となった。通常、同社の主力商品となる食酢領域では高年齢層が顧客の中心であるため、多くのZ世代に対してリーチできたことがわかる。また、来場者のアンケート結果を見ても、来場者の50%以上がミツカンへの気持ちがポジティブに変化したと回答した。このことから「新規顧客層であるZ世代から多くの共感を得られた」と林氏は語る。

 これだけの成果を収めた一方、1回目の開催を振り返ると課題もあった。同社では多くの消費者からの認知を獲得するためにマスメディアへの露出に注力。その結果17回ものテレビ出演も実現した。しかし、来店者の認知経路を分析するとテレビをきっかけとした来店者はたったの3%。6割以上はTikTokやInstagramなどのSNSが来店のきっかけになっていたためだ。

 そこで、2回目の実施(2023年7月)にあたっては、SNSに集中して集客プロモーションを行った。その結果、1回目は72万程度だったTikTokの総再生回数は、11倍超となる約808万にまで激増。来店者も前回比の+163%となる2,899人という結果につながった。

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カスタマージャーニーから逆算して施策を設計

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この記事の著者

岡田 果子(オカダ カコ)

IT系編集者、ライター。趣味・実用書の編集を経てWebメディアへ。その後キャリアインタビューなどのライティング業務を開始。執筆可能ジャンルは、開発手法・組織、プロダクト作り、教育ICT、その他ビジネス。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/11/29 09:00 https://markezine.jp/article/detail/47011

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