ヤクルトレディ起点の価値普及が肝
さらに大きな転機は、2015年4月に施行された機能性表示食品制度(※)だ。特定保健用食品や栄養機能商品以外の商品にもヘルスクレームの表示が可能になったことで、乳酸菌 シロタ株によるストレス緩和・睡眠の質向上を主張できるようになった。
※健康強調表示のこと。消費者庁の許可を受けると可能になる

「現代社会の健康課題に対して、乳酸菌の力を通じて当社がお役に立てる。新しい健康価値を提供できる。そんな手応えを感じました。このタイミングで新商品を出すことにより、停滞期に陥っていたプロバイオティクス飲料市場を再活性化しながら、当社のブランド価値と企業価値を高めようと考えたのです」(工藤氏)
おいしさを維持しながら1本あたりの乳酸菌量を増やした商品の開発に、20年近い月日が費やされた。その末に誕生したのが「Yakult(ヤクルト)1000」だ。
ヤクルト1000シリーズのテストマーケティングは、宅配チャネルから始まった。この背景には、ヤクルトレディに託された価値普及活動があったという。
「全国3万人以上のヤクルトレディに、Yakult1000を発売前に一定期間飲んでいただいたのです。自身が飲み続けて実感した効果を語ることで、顧客の共感を得やすくなり、新しい価値を理解いただけるようになりました。飲用体感を通じた価値普及活動が今回の肝だったと考えています」(工藤氏)
店頭用の商品に期待した“シャワー効果”
テストマーケティングを経て、ヤクルト本社は2021年4月よりYakult1000の宅配エリアを全国に拡大した。エリアの拡大にともない売上は伸びた一方、販売チャネルが限定的なために一般認知度の低さが課題に挙がった。「宅配だと利用しにくい」「小売店で買えるようにしてほしい」などの声も上がっていたという。
「当社はヤクルトレディによる宅配から販売をスタートしました。ただ今回は、新しい商品・価値・市場・顧客層を創造する目的で、店頭販売に合致する商品を出す運びとなったのです」(工藤氏)
店頭用の商品は、背の高い容器にすることで商品棚での視認性を確保。宅配用のYakult1000から名称を変え「Y1000」として販売を開始した。また、まとめ買いやリピート購入のニーズに対応するため6本パックを用意し、多くのチェーン店や取引先で取り扱われるようになったそうだ。
工藤氏によると、店頭用の商品を展開することには、単純な売上増加以外にも狙いがあるという。
「ヤクルト1000シリーズを、高付加価値・高単価の新たなフラッグシップとして位置付けました。特に、店頭用のY1000には、同じ店頭に並ぶ既存商品を含むヤクルトブランド全体の価値を高める“シャワー効果”を期待しました」(工藤氏)
