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第106号(2024年10月号)
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MarkeZine Day 2024 Autumn(AD)

1,000パターンの検証でわかった、成果を最大化するA/Bテストの基本と進め方

 A/BテストはWebサイト改善施策として非常にポピュラーな手段だ。しかしやり方によって期待したほどの成果が上がらなかったり、テストとして意味をなさなかったりというケースも少なくない。このような状況に陥らないためにすべきことは何なのだろうか。MarkeZine Day 2024 Autumnでは、Faber Companyの岩本庸佑氏が登壇。A/Bテストに対する誤解を解き、成果を最大化するための方法について解説した。本記事ではその詳細をレポートする。

いまさら聞けないA/Bテストの基本

 A/Bテストは、デジタルマーケティング分野においてポピュラーな改善施策のひとつだ。しかし漫然とテストを行っていたり、方法を間違えて実施していたりというケースも少なくない。

 そんな状況に対してミエルカSEOミエルカヒートマップなどのツールでWebマーケティングを支援するFaber Companyの岩本氏は、A/Bテストの進め方と陥りやすいポイントについて解説。まずを実施する際に留意すべき事項として「A/Bテストは手段であり、目的ではないこと」だと指摘した。

「A/Bテストを実施するのは、Webサイトを改善するためです。改善理由には、『コンバージョン率を上げたい』のほか、『ユーザーがより使いやすくなるインターフェースを提供したい』とUX面からの目的もあるでしょう。いずれにせよ、A/BテストとはCRO(Conversion Rate Optimization:コンバージョン率改善)施策を行うPDCAの中の1プロセスでであり、複数パターンを用意して特定の目的に対して最も高い成果が出るパターンを見つける検証作業です」(岩本氏)

 そんなA/Bテストでよくある勘違いが、実施時期を変えて複数パターンを検証するやり方だ。たとえば今週はAパターン、来週はBパターンというように複数のパターンの前後比較を実施する企業もある。岩本氏は「これはA/Bテストではありません」と注意を喚起した。

 理由の1つとして、カスタマージャーニーの変化がある。最初は情報収集や比較検討、次に購買意思が高まるというように、顧客の心理状態は日々変化する。そのため、異なる時期でA/Bテストを実施してもその結果の有効性は低くなる。

 また時期が異なることで、広告展開の変更があったり、競合他社の動向が変化したりする場合もある。だからこそ岩本氏は「A/Bテストは、同一期間・同条件の下で実施する必要があります」と説明した。

株式会社Faber Company アナリティクス/CROチーム<br />エレファントマネージャー 岩本庸佑氏
株式会社Faber Company アナリティクス/CROチーム
エレファントマネージャー 岩本庸佑氏

なぜA/Bテストが必要なのか

 そもそもA/Bテストは、必ず行わなくてはならない施策なのだろうか。

 Faber Company自身、デジタルマーケティングやWeb改善コンサルティングの企業ということもあり、「基本的にA/Bテストは『実施すべき』という立場」だが、やはりA/Bテストを実施することで企業が得られるメリットは非常に大きいと岩本氏は話した。

 第一のメリットは、短期間で成果が出せることだ。同一条件・同一期間内に複数のパターンを検証することで、最も成果の高いパターンを効率的に選定・展開できる。

 第二のメリットは、確かな成果を出せること。きちんと条件を同一にして、仮説を立てて実施することが条件だが、大々的に施策を展開する前にA/Bテストを実施することで成果を確かなものにできるのだ。

 そして第三のメリットは、成果を最大化できること。冒頭で「A/Bテストは、CROのためのPDCAの一部」と述べたが、PDCAを回していくことで成果を徐々に大きなものにしていける。

 ただし注意しなければならないのは、この3つのメリットを享受できるのは、「A/Bテストを正しく実施した場合」だ。では、正しくA/Bテストを実施するには、どういう点に留意する必要があるのだろうか。岩本氏は「どこから始めるべきか」「何を検証するのか」「どうやって進めるのか」という3つのポイントで説明を進めた。

A/Bテストはまず「ここ」から始めよう!

 Webサイトの改善に向け、A/Bテストを始めようと思っても、Webサイトを1つまるごとA/Bテストするのは現実的ではない。ではどこから手を付けるのが正解なのだろうか。

 この問いに対し、岩本氏は「改善インパクトが大きいところから始めるのが正解」だと話した。たとえば複数あるLPのA/Bテストであれば「最もPV数が大きいLP」から検証することが望ましい。ただ、Webサイトの検証に当たっては見るべきポイントが3つある。

 一つ目はトラフィックボリュームだ。LPのA/Bテストと同じ理屈で、「ユーザーが最も多く訪れているページ」から検証を始めたほうが得られるインパクトも大きくなりやすい。

 注意すべきは、デバイス別・季節指数を考慮してデータの抜き取り期間を決め、より多くのユーザーが接触しているページから検証を進めること。人的リソースや期間は限られているので、デバイス別ならば「PC・スマホ」とざっくり分けて、インパクトの大きい方から着手することが望ましい。

 一方で接触率が高いところだけを検証・改善したからといって、すぐに事業成果も上がるわけではない。そこで考えるべきは二つ目となるゴールからの距離だ。

「ECでいえば『購入完了』を指します。そこに至るまでに、より少ないステップで購入を促せる改善を加えることで、事業成果へのインパクトも大きくなりやすいでしょう」(岩本氏)

「短期的に成果を出そうとすると、購入時にログインして表示されるアカウントページや購入必要情報、最終確認ページなどが重要ポイントになりやすいでしょう」と岩本氏は話す。
「短期的に成果を出そうとすると、購入時にログインして表示されるアカウントページや購入必要情報、最終確認ページなどが重要ポイントになりやすいでしょう」と岩本氏は話す。

 三つ目が、課題の大きさだ。トラフィックが大きく、ゴールからの距離も近く、さらに「離脱が多い」もしくは「直帰率が高い」などの課題がある場合は、当然そのページから着手した方が良い。

 こうしてWebサイトを総合的に見ていきながら、A/Bテストを実施すべき範囲を決めていくのだ。岩本氏は「Webサイト全体で、どのページにどれくらいユーザーが接触しているかを把握できるシートを全社で共有しておくと計画が立てやすくなる」とアドバイスした。

LPの場合はFVとCTAボタンを改善、Webサイトの場合はユーザーフェーズ起点で考える

 A/Bテストのスコープが決まったら、次に考えなくてはならないのは、何から始めればいいかだ。これは、LPの場合とWebサイトの場合で変わってくる。

 まずLPの場合、高い成果が期待できる要素は、ファーストビュー(FV)の改善と、CTA(Call To Action)ボタンの改善だ。この2つに注力してA/Bテストを設計することが望ましい。

 FV改善に取り組む際には、まず競合他社のLPと比較してからテスト要素を抽出していく。次に改善ポイントを整理し、自社LPをヒートマップ分析。熟読されているエリアに足りないコンテンツを盛り込んでいくなど、具体的な改善案につなげていくのだ。

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 CTAボタンの改善も同じく、競合他社との差分分析を基にテスト要素を抽出。ボタンの形や大きさ、色、フォントや文言、問い合わせ先が電話なのかWebなのか来店予約なのか、CTAボタンの各要素について違いを洗い出す。そのうえで、ボタンの並べ方などもどれが効果的なのか検討していく流れだ。

 なおCTAボタンは限られたスペースであり「ユーザーが目に留める時間も1秒前後と短いため、テキスト量が多すぎてもユーザーに届かない傾向があるので注意が必要」だと岩本氏は話した。

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 ではWebサイトの場合では「何」から手を付けるべきなのだろうか。岩本氏は「ユーザーフェーズで考えましょう」とアドバイスした。

「自分のニーズに気付いているのか否か、そして自社製品・サービスに関して理解しているか否かの4軸で改善案を考えていくことをおすすめします」(岩本氏)

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 ニーズが顕在化して指名検索で来ている層が集まるページであれば、スムーズでわかりやすいCTA導線を設計し、CTAボタンを改善することが必要になる。一方ニーズが顕在化しておらず、サービスについて理解を促したい場合は、サービスサイトへの遷移を強化するCTA導線の追加、検索キーワードに合わせて「資料ダウンロード」などのCV設計を行う必要がある。

 こうして改善すべき点を洗い出し、優先順位を付け、改善案を出していく。改善すべき要素の順位付けが終わったら、各要素が抱える「課題」と「施策」を一覧表にして全社共有するのだ。

 この時に留意すべきポイントも、全て一覧にすることだ。「なぜならA/BテストはPDCAの一環であるため、PDCAのサイクルを止めず、常に検証と改善を繰り返すことが必要だから」だと岩本氏は説明する。

A/Bテストを「どのように」進めるのか

 さてA/Bテストについて、最後に考えなければならないのが、どうやって進めるかだ。

 これは岩本氏が冒頭から繰り返しているように、「PDCAを回す」ことに尽きる。PDCAを回す時に大切なのは、「CVRが上がる」「ビジネス的なインパクトが得られる」という2つに加え、要因分析が重要になってくる。

 要因分析とは「なぜ勝てたのか」「なぜ負けたのか」を分析すること。その分析を行うために必要なのが、施策ごとに計測する指標を設計することだ。Faber Companyでは、1つのテストで計測すべき指標を40〜50ほど設計するという。

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 岩本氏は「サイト基本KPI」「ページ基本KPI」「施策KPI(仮説による態度変容)」の3つを挙げて次のように説明する。

「まずサイト全体の基本KPIの場合、目標とすべきゴールはコンバージョンです。そのためKPIは、ゴール地点のコンバージョンポイントからのファネルを設計して指標を設けることが効果的です。一方ページ基本KPIの場合は、A/Bテストによってスクロールや滞在時間、またはボタン自体のクリックなど、要素ごとに期待される指標と実際の成果を見比べる必要があります。そして施策KPIは、検証したい仮説の正否を判断する指標を立て、実施施策箇所や周辺領域においてユーザーの態度がどのように変容したのかを確かめなくてはなりません」(岩本氏)

 こうして3つの分野でそれぞれ指標を設定し、成果を見ていくと、各数字の変化で関連性が可視化でき、勝因や敗因の要因が浮かび上がってくるのだ。

ツールを活用してテストを実施、Webサイトのパフォーマンスを効率よく最大化

 指標を細かく見ていくことは、要因分析において重要なプロセスではあるが、実際にPDCAを回していくうえでは非常に負担にもなる。実際、分析工数の肥大によりPDCAが回せなくなるというケースも少なくない。A/Bテストに関しても、「テストを実施する」ことが目的なのではなく、Webサイトの改善・改良の先にある売上拡大や契約増を達成するためにPDCAを回すことを重視するのならば、分析の負荷をできるだけ軽減する仕組みが必要だ。

 こうした課題を解消するために岩本氏が勧めるのが分析ツールの導入だ。Faber Companyでも、A/Bテストの実施計画から結果分析までのプロセスを支援する「ミエルカヒートマップ」というツールと付随してCROコンサルティングを提供している。

 もちろんアナリティクスツールで綿密なデータ分析を行うことも大事だが、「簡易的にヒートマップ分析を行い、A/Bテストを行うべきページや要素を明らかにして、検証結果を簡易的に見ていきながらPDCAを回していけば、数ヵ月から半年で成果がみえてくる」と岩本氏は話す。

 まずはA/Bテストのやり方を見直し、効率的に実施・検証するためにツールを有効活用することで、自社のWebサイトのパフォーマンス最大化を目指すのも一考だ。

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この記事の著者

岩崎 史絵(イワサキ シエ)

リックテレコム、アットマーク・アイティ(現ITmedia)の編集記者を経てフリーに。最近はマーケティング分野の取材・執筆のほか、一般企業のオウンドメディア企画・編集やPR/広報支援なども行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:株式会社Faber Company

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2024/10/31 10:00 https://markezine.jp/article/detail/47079