ウイングアーク1stが目指す丁寧なマーケティングの形とは?
脱・THE MODEL型で、顧客起点のコンテンツマーケティングに取り組んできたトヨクモに対し、ウイングアーク1stではどのようなコンテンツマーケティングを行っているのだろうか。野島氏は「小さくても良い、もっと丁寧な活動がしたい!」と語った。

BtoBビジネスの場合、売上のコントロールは難しい。また、マーケティングから売上までの距離が遠いことから、目先のリード獲得に目が行きやすい。しかし、多額の資金を広告や展示会に投じて数多くのリードを獲得しても、そこには無駄なリードが存在し、それが無駄なコールや無駄な営業活動を生んでしまう懸念がある。
野島氏は、このリード獲得偏重の企業が多いことを踏まえ「マーケティングがお客様の罠になっていないか?」と説いた。この問いの答えとして野島氏は、「短期的なリード獲得よりも、顧客価値と自社価値の一致を重視することが重要」と語った。
たとえば、テレビCMを出しているが意図通りに伝わっていないこともある、展示会に出展したが予定通りの施策になっていないこともある、これはお客様の課題を感じるより出来上がったものを売っているせいではないかと仮定した。解決のために3つの低い解像度という課題を設定し取り組んでいる。

コンテンツマーケティングは記事・動画・本など、お客様の声を使い価値のあるストーリーを日々作っていくことで積み上がる。また、コンテンツマーケティングは投資額が他の施策に比べると少なく始められるのが魅力だ。
コンテンツならよりN=1にフォーカスできるなど、間口が広い取り組み方ができる。このようにコンテンツはマーケターが作ることができる商品であり、アンコントローラブルからコントローラブルな環境を生み出すことができる。
もちろんプロセスを評価することも大切だ。目先の成果は水物であり、目先に囚われていては大切なことを見失う。正しいと思える活動を定量的に評価することが重要である。
AIがもたらすコンテンツマーケティングの進化
ここまで、両社が取り組んできたコンテンツマーケティングの基礎の部分が明らかになった。野島氏と中井氏はもう1つのテーマとして、生成AI時代のコンテンツマーケティングはどうなっていくのか、また両社はどのようなアプローチをしているのかについて議論した。
野島氏は「2024年、AIはコンテンツマーケティングに2つの大きな変革をもたらす」と語った。1つがコンテンツ制作の限界費用低減、もう1つがパワーゲーム化したコンテンツマーケティングの終焉である。
事実、SEOに多くの人的リソースをかけて上位表示を目指したり、多額の広告出稿をしたり、資金力のある企業に検索順位などが支配される、いわばパワーゲーム化しているのが現状だ。しかし、リソースが少ない企業は片手間のSEO、広告予算も取れないためにコンテンツの質・量が担保できず、流入も少ないため、改善の打ち手の精度も下がる。
この資金力のある企業しか取り組めなかったコンテンツマーケティングが、生成AIの登場によって変わろうとしている。AIがマーケターのセンスや捉え方を学習し、SEOに適したコンテンツは比較的容易に生成できるようになってきた。小規模企業でも大量のコンテンツ制作が可能になり、PDCAサイクルの加速化が期待される。

ビッグデータを活用したデータ・ドリブンマーケティングにも、N=1である顧客起点マーケティングにもコンテンツマーケティングは相性が良い。コンテンツがなければデータは生み出せないが、データはコンテンツを作るトリガーとなりうる。