Carvana ‐ JoyRide
車を所有されている方は、ご自身の愛車が納車された日のことを覚えていますか?
2023年、米国でオンライン中古車ディーラーを展開するCarvanaは、購入者に対して「JoyRide」というキャンペーンを実施しました。
このキャンペーンで展開されたのは、Carvanaで中古車を購入した方が、購入者名、車のメーカーとモデル名、購入日と購入場所、その日に世の中で起きていたできごとを入力すると、パーソナライズドされたビデオを作ってくれるというサービスです。
AIを活用して制作されたビデオは、愛車がオーナーの自宅に向かって走るストーリーになっており、愛車が「納車されたその日のこと」「その時のオーナーに対しての気持ち」などを語ります。登場する愛車は3Dモデルで車種が忠実に再現されており、また動画で描かれるシーンも語り口の内容とシンクロ。非常に良くできたコンテンツとなっています。愛車から「一緒に楽しいドライブ(JoyRide)に行こう!」「選んでくれてありがとう!」なんて言われたら、より愛着を持ってしまいそうですね!
結果として、期間中に約130万本のビデオが制作されました。またビデオはソーシャルメディアでシェアがされることが想定され、縦型のフォーマットで提供されており、ソーシャルでの拡散も多くなされました。
HAVAS社の調査では、生活者がブランドに対して期待するポイントに、購入体験でのAI活用を挙げており、本キャンペーンのようにパーソナライズドされたサービスは非常に有効だと考えられます。
同時に、AI導入は効率化が図れる一方、サービスに本来の人間的なタッチが無くなる、というマイナス面も出てきます。今回のCarvanaの事例のように、AIを活用しつつも、いかにコミュニケーションに人間味を持たせ、顧客体験をデザインしていくかは、今後大事になっていく観点かも知れません。
コカ・コーラ ‐ Y3000
「未来の味」はどのようなものなのでしょうか?
比較的有名な事例ではありますが、2023年に米コカ・コーラは「西暦3000年の未来でも人々をリフレッシュさせていたい」という願いから、AIと共同開発をした「Coca Cola Y3000」を限定販売しました。
「西暦3000年」や「未来の味」を謳ったこの商品ですが、開発でその参考として使われているのは、世界中のコカ・コーラファンが「未来をどう思い描いているか?」を集約したデータ。未来への感情や期待感をAIが解析し、色彩や味などの開発に活かされました。
パッケージデザインもAIが生成したムードボードを参考に作られ、さらに商品に付随する二次元コードからは、現在の写真から西暦3000年の景色を生成できる「Y3000 AI Cam」へのアクセスができるようになっています。購入者は様々なアングルから未来を味わえるキャンペーン設計となっていました。
同商品は日本未発売ということで、筆者も気になるその味の体験はできていないのですが、「人工知能と開発した未来の商品」というアイデアは、当時のソーシャル上で大きな話題となりました。
AIのクリエイティビティに対して、生活者が大きな関心を持っていることは調査データからも見られ、これが本キャンペーンが興味喚起に成功したことの裏付けとして考えられるでしょう。
調査から、生活者はAIの創造性に対してポジティブに考えていることが見受けられます。特にプロシューマー層はAIの持つ可能性を大きく信じており、たとえ人工知能が作った作品(音楽、映画、絵画、小説)であっても、良いものは受容するという意見を持っていることがわかります。
生活者の興味関心が集まることから、今回のコカ・コーラのようなAIの創造性に注目したキャンペーンは今後も出てきそうですね。
続いては、携帯電話会社のモトローラの事例です。