パナソニック スポーツ社設立の背景
――最初にパナソニック スポーツが展開する事業について教えてください。
一つはスポーツチームの事業化と運営です。Jリーグのガンバ大阪をはじめ、当社は合計5つのスポーツチームを保有しています。ガンバ大阪は別会社で運営していますが、SVリーグの大阪ブルテオン、ジャパンラグビーリーグワンの埼玉パナソニックワイルドナイツらの事業運営を担っています。そして事業化できない社会人野球のパナソニック野球部や女子陸上競技部の運営も担当しています。
もう一つはスポーツの価値を表現していくことです。事業化できるスポーツとできないスポーツ、どちらもスポーツの持っている価値を高め表現することは共通しています。
たとえば社会人野球のチームは、興行による収入を得られません。しかし、社会人チームのほとんどは社名を背負っており、選手やチームの活躍によってブランディングの効果があります。チームを応援することで社内の一体感を育むインターナルブランディングにも一役買っています。また、地域活動にあたるので、地域の方とのコミュニティ形成にもつながります。
こういった価値を最大化し、表現することでスポーツをサステナブルなものにしていきたい。そんな想いを持って事業に取り組んでいます。
――収益が作りにくい社会人スポーツであっても、取り組み方次第で企業ブランディングなどに大きな効果をもたらすというのが理解できました。パナソニック スポーツとして分社化しているのにはどのような狙いがあるのでしょうか。
スポーツを取り囲む環境に対し、主体的に動いていきたい思いがありました。これまで企業スポーツといえば、会社の業績が悪化すれば活動が縮小され、場合によっては廃部になることもありました。結果を出し続ける強いチームであり、収益以外の価値を生み出すポテンシャルがあってもです。こうした現状に向き合い、先ほど述べたように、価値を表現していくことでスポーツを持続可能なものにしたいと考えていました。
また、昨今様々なスポーツでプロリーグ設立の動きがあり、そこに入るチャンスに巡り合う可能性もあります。ただその動きを「いつ始まるんだ?」と待っていては、良いスタートを切ることはできません。
こうした考えを持っていた中、スポーツのビジネス化に関する社内勉強会が発足し、その後スポーツマネジメント推進室を立ち上げました。そして2022年、パナソニックグループが持株会社制に移行したのを受け、パナソニック スポーツとして独立した形となります。
ローカルとグローバルで活動していく パナソニック スポーツの戦略とは?
――様々なスポーツチームを持つパナソニック スポーツですが、共有している戦略はありますか。
共通している戦略としてはローカルとグローバル両方に注力することです。
スポーツには人をつないでいく力があります。この力によってチームを応援してくださる方々とのコミュニティが生まれ、そのコミュニティが大きな力を発揮します。このコミュニティを作る上で、ホームタウンとなる地域や周辺地域といったローカルを意識することが重要です。
大阪ブルテオンやガンバ大阪にはパナソニックの冠をつけていません。これもローカルの力を最大限活かすためで、パナソニックの名前がついていることが地域の方との距離を遠ざけてしまうかもしれない場合には、必要ないと考えています。
また、競技によってもローカルの向き合い方が異なります。ラグビーチームの埼玉パナソニックワイルドナイツは今、埼玉県熊谷市をホームタウンとしています。
パナソニック スポーツの多くのチームは大阪が拠点ですが、ワイルドナイツは元々、群馬県を拠点としていて関東になじみが深く、現ホームタウンの熊谷市とともに旧ホームタウンの太田市や大泉町が県をまたいで協力しあう地域振興協定を結んでいます。後に川越市や、埼玉県のいくつかの大学とも締結しました。ローカルとの強い結びつきを、さらに広めている状況です。
一方で、グローバルも重要です。スポーツは言葉が通じなくても、ある程度内容を理解し楽しめるため、国や地域を越えて活動することもできます。スポーツの国際大会の盛り上がりを見れば一目瞭然ですよね。
パナソニック スポーツのチームにも、地域や日本国内を越えて世界、特にアジア圏のファンを増やせるポテンシャルがあるので、グローバルを見据えた展開も視野に入れています。