【3】動画CMの受容性に問題発覚?
ネット動画への広告挿入に関しては、前述のとおり「送りつけてはいるものの、そもそも動画コンテンツへのアクティブかつ非常にタイムパフィーマンスが意識された行動なので、ユーザーの意識からCMを受容する余地があまりない」と言える。
広告主はむやみにデジタルへの予算移行をするのではなく、その効果をもっと検証すべきだろう。
CMの受容性に問題があるのは、まだまだネット動画CMに最適化したクリエイティブが追求できていないということもある。受容性の高い、効果的な広告枠とするためのクリエイティブ開発のためにもこうした調査は行われるべきだろう。
さて、この話も前述のとおりネット動画の視聴がテレビ画面にシフトすると、ここでまた状況は一変する。このことがテレビ放送にとってどれほど脅威となるかは言わずもがなだが……。
【4】広告会社は「営業のビジネス開発力」が試される
まえがきに書いたように、本格的にAI時代に突入するがゆえに、広告会社のフロントたる営業のビジネス開発力や、そもそもの人間力が試される。
「広告会社」と書いたが、既にいわゆる広告を扱ってなんぼの時代ではない。何をもって収益を上げて行くかというビジネスそのものをプロデュースすることからが求められる。
その意味で会社はフロント(営業)に能力のある人材を集めていかなければならない。
提案物も幅が広がるので、営業が社外の知見やスキルをダイナミックに活用しないといけないが、こうした役割や能力が現場で意識されているかも重要だ。ベムは営業としては、提案内容そのものよりも、「勝ち筋」を読んで、提案活動を方向づける「プレゼンテーションデザイン」機能を育てる必要があると考える。
平場の営業活動がしにくい昨今ではあるが、クライアントをしっかり掌握する術を身につけること、ここはまさに「人間力」であり、AIが当面到達できない領域だろう。
「営業の概念と意識の見直し」、これがAI時代突入に必須の事項となろう。
【5】リテールメディアに大変革 アップファネルとつながる
リテールメディアというと、売り場に置かれた広告媒体、ないし販売店の顧客データによるスマホ配信メディアという認識にとどまっているかもしれない。
その概念を広げる一助になる話に、米国ウォルマートのVizio買収がある。VisioとはLGに次ぐ販売台数のテレビメーカーである。つまりウォルマートはテレビをリテールメディア化した訳で、結線されたVizioのテレビに顧客データによる広告(これは広告というべきか消費情報というべきか)を配信するつもりだろう。
この話は、リテールメディアというと購買時点つまりファネルの一番下で機能するものという認識があるかもしれないが、テレビに配信するCMなので、アップファネルに作用するものになったことを示している。
もちろん既に認知や購買経験があるブランドに対してリピートを促すもので、クーポンなどで購買を促進する情報をプッシュするものであっても、別のコンテキストで関連するブランドに対する認知を同じ対象に促すことができる。ベムは今後、「SNS」と「TV&ストリーミング」そして「リテールメディア」が新たな3つのメディアとして機能すると思っているが、この3つはそれぞれファネルのすべてで機能するようになるだろう。