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愛されるブランドの仕組み:ブランド・リレーションシップ入門講座

広範囲愛着型・業績不振型…?2つの顧客基盤分析ツールで自社ブランドを診断しよう【第6回】

VBマップ タイプ別の特徴

 すべてのブランドについてポジティブ・ボリュームとポジティブ・バランスが計算できたら、これら2つの変数の値を用いて各ブランドをマップ上に配置していくことで、VBマップができあがります(図5)。 

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【図5】完成したVBマップ

 VBマップでは、より多くの顧客に好まれているブランドほど右寄りに配置され、ブランド・リレーションシップを形成している顧客が多いブランドほど、上方に配置されます。

 図5に示した架空の例では、ブランドAやブランドBは、多くの顧客から肯定的に評価されており、しかもブランド・リレーションシップを形成している顧客が多いとわかります。

 ブランドC〜Eは多くの顧客から肯定的に評価されていますが、リレーションシップを形成している顧客は必ずしも多くありません。ブランドFは一部の顧客に強く愛されているブランドです。そしてブランドGとブランドHは、肯定的な評価をする顧客も、リレーションシップを形成している顧客も、比較的少ないことがわかります。

 VBマップを構成する4つのセルについて、それぞれの特徴を整理しておきます。

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図6 VBマップの解釈

右上:広範囲愛着型

 多くの顧客から肯定的な評価を得ており、なおかつブランド・リレーションシップを形成している割合も大きいという特徴があります。品質やブランド自体のイメージに対する評価だけでなく、ブランドへの愛着も十分に形成されているブランドです。

右下:広範囲支持型

 多くの顧客から肯定的な指示を得ていますが、ブランド・リレーションシップを形成している顧客の割合は少ないという特徴があります。広範囲支持型のブランドは、製品そのものの品質やパフォーマンス、ブランド自体のイメージなどが、ブランド・エクイティの駆動力となっていると考えられます。

左上:特定顧客愛着型

 肯定的な評価をしている顧客は必ずしも多くないものの、一部の顧客に強く愛されているという特徴があります。好みがはっきりと分かれる、個性的なブランドが多いと考えられます。

左下:業績不振型、低価格型、習慣型、競争回避型

 左下方向に位置するブランドには「業績不振型」「低価格型」「習慣型」「競争回避型」という複数のタイプがあります。これらは肯定的な評価をしている顧客が相対的に少なく、なおかつブランド・リレーションシップを形成している顧客も比較的少ないという特徴があります。

 中立層や拒否層が多いために、市場におけるブランド評価が低く、売上や利益に苦戦しているケースが多いのですが、低価格や習慣(あるいは惰性)によって購買されている場合や、代わりになるブランドが他に存在しないことで、十分な売上や利益を達成している場合があります。

実務で活用するポイント

 今回はブランド・リレーションシップのマネジメントに取り組む最初のステップとして、顧客基盤を分析するツールを紹介しました。2つのツールを、実務で活用するポイントをまとめてみましょう。

  1. RPマトリクスで顧客基盤の実態を把握し、各セグメントの割合を見ます。
  2. VBマップで、自社ブランドのタイプを確認し、今後目指すべき方向を考えます。
  3. RPマトリクスとVBマップでの分析結果を基に、セグメントごとの適切なアプローチ方法、市場でのポジショニング戦略を講じます。

 RPマトリクスとVBマップを作成すれば、自社ブランドの状態が手に取るようにわかるはずです。またそれによって、いくつもの打ち手が見えてくると思います。これらのツールを活用して、他社とは異なるユニークな戦略を策定することが、ブランド・マネジメントを成功に導くために大切です。

 なお、RPマトリクスやVBマップに実際に取り組むには、コツがあります。マトリクスの解釈や戦略策定については、拙著『ブランド・リレーションシップ』をご覧になるか、あるいは筆者に直接ご連絡いただければ幸いです。次回は、より具体的なマネジメント手法について説明をしていきます。

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ブランド・リレーションシップ』(著)久保田進彦、有斐閣、6,160円(税込)

【参考文献】

  • 久保田進彦(2014).「ブランド・リレーションシップの戦略」田中洋編「ブランド戦略全書』(pp.49-74) 有斐閣.
  • 久保田進彦(2024).『ブランド・リレーションシップ』有斐閣.

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この記事の著者

久保田 進彦(クボタ ユキヒコ)

青山学院大学 経営学部教授、博士(商学)(早稲田大学)。日本商業学会学会賞受賞(2007年論文部門 優秀論文賞、2013年著作部門 奨励賞)、公益財団法人吉田秀雄記念事業財団助成研究吉田秀雄賞受賞(2010年度、2016年度)。最新作は『ブランド・リレーションシップ』(有斐閣)他著書多数。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2025/01/24 09:00 https://markezine.jp/article/detail/47948

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