ショートドラマ視聴者の価値観
次に、アンケートデータを用いて、ショートドラマ視聴者の生活価値観を見ていきましょう。図表7は生活価値観を聴取したアンケート調査協力者のうちYouTubeでのショートドラマ接触者(30代以下)の値と30代以下全員の値を比較したものです。図表8は同様のアンケート協力者のうちショートドラマアプリ接触者の値と全員の値を比較したものを示しています。それぞれ全体との差からYouTubeでのショートドラマ接触者およびショートドラマアプリ接触者の特徴を見ていきます。


図表7を見てみると、YouTubeショートドラマ接触者は「今という瞬間が一番大切だと思う」や「現在をできるだけ充実させたいと思う」、「ドキドキ・ワクワクするようなことが好きだ」という項目が高くなっており、ショートドラマが日常のちょっとしたタイミングで得られる楽しみになっているのではないでしょうか。また、人付き合いは好まないものの、好奇心が旺盛で、その好奇心をドラマで満たしているのかもしれません。
一方で、図表8を見ると、ショートドラマアプリ接触者は「変化に富んだ刺激的な生活を送りたい」「新しいことにどんどんチャレンジしたい」といった生活価値観が特徴的なものとして上位に挙がっています。普段使っているYouTubeのプラットフォームを利用してショートドラマを見ている人よりも、ショートドラマアプリを利用している人のほうが没頭するものや刺激を求めているように見られます。
多様な選択肢の中で重要視される「時間」
メディアの利用実態から、ちょっとしたスキマ時間でできること・見られるものが伸びていることがわかりました。この背景にはスキマ時間に見られる・行動できることはもちろん、選択する際の気軽さもあるのかもしれません。見られる動画・行動できることが増えた近年、選択のハードルが低く、気軽に始められるもの・見られるものほうが好まれるとも考えられます。自分の選択したものが気に入らなかったとしても“損した気分”は最小限に抑えられるからかもしれません。Z世代は“失敗したくない世代"とも言われますが、若年を中心に人気が上昇していることを考えると、この“ショート化”にも表れている気がします。
私自身もショートドラマを数年前から見ていますが、初めて知ったのはコロナ禍での大学時代でした。オンライン授業になったり外出が難しくなったりと、生活の楽しみが限られる中で見つけた1つの楽しみでもありました。テレビドラマは週に1回の放映がほとんどですが、ショートドラマは更新頻度が高いため、続きが気になってからすぐに見られる点や、短い時間で気軽に見られる点が魅力的だと感じます。
コンテンツが増えていく中で、「時間」が重要視されるようになってきた現代。今後も様々な面での“ショート化”が見られるかもしれません。
また、暮らし全般にも目を向ければ、ここで紹介したようなスキマ時間を有効活用できるようなサービスにはビジネスチャンスがありそうです。以前だとスポーツジムに行くと着替えやシャワーなどを含めてそれなりの時間がかかり、その負担が退会の理由にもなっていたようです。その点、「chocoZAP(チョコザップ)」はジムと紹介しましたが、他にもエステ、ネイル、脱毛などのサービスやカラオケも短時間で利用可能です。ちょっとしたスキマ時間に身体も心もメンテナンスできる点が会員の急拡大につながっているのかもしれません。
コンテンツやサービスの“ショート化”や“スキマ時間の有効活用”にはまだまだ可能性がありそうです。
調査概要:
【i-SSP(インテージシングルソースパネル)】
調査期間:2013年~/調査サンプル(全国男女15-69歳):13,300s(MB)/調査手法:機械式(ログ)
インテージSCI(全国個人消費者パネル調査)を基盤に、同一対象者から新たにパソコン・スマートフォンからのウェブサイト閲覧やテレビ視聴情報に関して収集したデータです。当データにより、テレビ・パソコン・スマートフォンそれぞれの利用傾向や接触率はもちろん、同一対象者から収集している購買データとあわせて分析することで、消費行動と情報接触の関係性や、広告の効果を明らかにすることが可能となります。また、調査対象者に別途アンケート調査を実施することにより、意識・価値観や耐久財・サービス財の購買状況を聴取し、あわせて分析することも可能です。
※ シングルソースパネルは株式会社インテージの登録商標です。
【生活者360°Viewer】
調査期間:2024年3月~4月/分析対象サンプル(全国男女15-69歳):YouTubeショートドラマ接触者(30代以下)・ショートドラマアプリ利用者のうちアンケート回答者/調査手法:アンケート調査
「生活者360°Viewer」は生活者理解に基づいたマーケティング戦略の立案・実行を支援する分析サービスです。消費行動、メディア接触状況、さらには生活意識・価値観など、インテージが保有するさまざまなデータの連携により、多面的で詳細なターゲット像のプロファイリングを実現しています。幅広く深い生活者理解を起点として、商品・サービス開発からコミュニケーション領域に渡る、マーケティングの諸施策の立案と実行を可能にします。