顧客自身もつかめていない心理を洞察する
MZ:確かに、世の中にまだないプロダクトだったら、「こんなもの」と表しようがないですね。
西口:そうなんです。顧客は、企業がどんな技術やノウハウを持ち、何を提案してくれるかといったことを想像できません。また、実は不満や要望があっても認識していなければ言語化できず、それを解決できるとも思ってないことが多いので、「こんなものが欲しい」とは言えません。
だから、マーケターが顧客の行動や言葉の奥を汲み取り、心理を洞察するのです。無意識の心理まで考えて、自分や自社ができるどんな提案をしたらハッピーになっていただけるかを検討する。それが、連載を通して繰り返しお話ししてきた「WHOとWHAT」の最適な組み合わせを見つけることにつながります。
この組み合わせが成り立つ時、価値が生まれます。一連を実行し、価値を創造できるのが、マーケターだと私は思っています。
ただしこれは「価値の提供」とは違います。マーケティングの教科書や記事などでは「価値の提供」という表現がよく使われますが、マーケターができるのはあくまで価値の“提案”であり、価値を成立させるのは顧客です。そう考えると、そもそも価値の創造とは、顧客と企業の共創なのかもしれませんね。
WHOとWHATを考え抜き、価値を提案し続けよう
MZ:最後に読者のマーケターへ、メッセージをいただけますか?
西口:いろいろなことを解説しましたが、絞り込むと「顧客も世の中も変化する。だから、WHOとWHATを考え続ける」とお伝えしたいです。優秀なマーケターは必ず、世の中の変化を常につかみ、かつ顧客の現状もつぶさに捉えようとしています。それが結果を出せる源泉なのだと思います。
価値とは受け取る人によって変わるので、ある意味で漠然としたものかもしれませんが、それでも顧客が対価を払うのはプロダクトではなく顧客にとっての便益と独自性であり、それが顧客の見出す「価値」です。そして社会も顧客も変化し続ける以上、考え続けることが大事なのです。日々繰り返し続ければ、なかなか結果につながらない時期があっても、必ず価値を的確に捉えられるようになっていきます。その時は、必ずやってきます。
ただしそのためには、顧客を“マス”として扱ってはいけません。必ず、名前のある実在の顧客に寄り添って理解することが不可欠です。それが自分の場合もあると思いますが、どんな場合でも、一人の顧客を洞察することが成功への王道になります。
顧客が喜ぶことが変わっていく前提で、顧客自身もつかめていない心理を洞察し、喜ばれるものを提案し続けようと努力する。そうすると、世の中に膨大にある「○○マーケティング」という手段手法、つまりHOWに惑わされずに、価値が成立するWHOとWHATをしっかり見出せるようになります。
とはいえ、私自身が35年間マーケティングと経営に携わってきてなお、マーケティングと顧客について学び続けています。連載で紹介しきれなかった私の学んだことやマーケターへの提案などは、無料のウェブサイト「Wisdom-Beta」で発信しています。よろしければ、本連載と合わせてこちらも役立ててもらえたら幸いです。常に学び、考え続ける姿勢を忘れず頑張っていただければと思います。長い連載にお付き合いいただきありがとうございました。
西口氏のマーケティング入門連載【第24回】はこちら!
