SmartNews Adsが抱えていた強みと課題
MarkeZine編集部(以下、MZ):現在、広告代理店のディスカバリーでは、SmartNews Adsをどのように運用されているのでしょうか。
野口:当社にとってSmartNews Adsは、広告運用を行うとなった際にまず最初に準備を行う最注力媒体の一つです。
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野口:その理由として、他の媒体と比較した際の「CPCの低さ」と配信を開始してから「成果を上げるまでの速さ」が挙げられます。特に、初動配信からの効果のスピードは非常に速く、デモグラ配信の段階でも一定の獲得が取れる媒体であると感じています。
MZ:成果を実感する一方、SmartNews Adsの運用上の課題もあったとのことですが、具体的にどのような部分に課題を感じていたのでしょうか。
野口:キャンペーンの中で「特定のクリエイティブばかりが配信されてしまう」という部分ですね。そのクリエイティブの効果が良い時に配信が偏るのは良いですが、たとえ翌日にCV率が悪化しても配信が偏ったままでした。そのためCPAが高騰していましたし、そもそも特定のクリエイティブで配信が偏ってしまうため、新規のクリエイティブやバナーの効果検証を行いにくいという問題もありました。
久保田:配信を行う際の「工数の多さ」も課題の一つとして挙げられると思います。検索クエリやWebサイトアクセスなどのデータを活用して広告を配信する媒体と比べると、SmartNews Adsでクリエイティブの検証を行うためには、キャンペーン数やAdグループ数を格段に多くする必要がありました。
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久保田:小回りが利くので初動から獲得しやすいとも言えますが、その分運用時に管理する広告が増えてしまい、手がかかってしまうという課題もあったと思います。
MZ:これらの課題に加えて、他にスマートニュースさん側に挙げられていた課題があれば教えてください。
浅香:大半はお二人からいただいた意見と同様のものでした。また、野口様が言及していた「特定のクリエイティブに配信が寄ること」が原因でフリークエンシーが上がってしまい、効率の良いクリエイティブが長続きしなくなる、いわゆる“クリエイティブの枯れ”の問題も挙がっていました。
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浅香:そのため運用担当者様は、成果を出せる新たなクリエイティブを常時用意する必要があり、ご負担となっていました。
VoC起点でプロダクトを改善、「広告開発企画チーム」の取り組み
MZ:クライアントから広告運用上の課題や悩みを受け、スマートニュースではどのように対応したのでしょうか。
佐藤:2024年7月に「広告開発企画チーム」を新たに立ち上げました。営業チームと開発チームの間に立ち、お客様の声(VoC)を回収する専任チームです。
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佐藤:同チームでは、実際にSmartNews Adsを日頃から活用くださっている広告代理店や広告主の方などからニーズや課題を伺い、その課題を開発チームと協力しながら改善に向けて取り組んでいます。
同チームのメンバーには、「メンバーが営業現場に対する知見をもっている」かつ「以前から開発チームとの絆が強く、連携していた実績がある」人材が選出されました。
このような組織にすることで、課題の認識を「開発チーム」と「営業」のどちらかに視点が寄りすぎないようにし、両組織間の橋渡し役となることを目指しています。
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MZ:同チームがプロダクト改善に向けて行ってきた具体的な取り組みをお聞かせください。
佐藤:最初に取り組んだのは、代理店の方々の本音を伺うことです。ユーザー企業様各社からニーズやプロダクトに対して感じる不満についてヒアリングし、それらの意見を集約。そうすることで複数のクライアント様が共通して感じている課題を浮き彫りにしていきました。
その結果、ディスカバリー様から挙がってきた「ロジックやUIに癖がある」「工数がかかる」といった課題は他のクライアント様でも同様に感じていることが判明しました。そこで、当社のエンジニアである西尾や社内データサイエンティストと協力して改善を進めました。
広告パフォーマンスだけではない、“運用のしやすさ”を高めるアップデート
MZ:広告開発企画チームからの課題整理を受け、開発サイドの反応はどうでしたか。
西尾:エンジニア視点で見ると挙げられた課題に対して初めは、「優先すべき問題ではないのではないか」と感じていました。しかし、広告開発チームと議論を複数回重ねる中で、ユーザー側がSmartNews Ads活用時にいかに不便を強いられているのかを具体的に把握することができました。
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西尾:そこで、ロジックの改善に取り組む際には、「エンジニアチームの考え方を変革すること」に特に留意しました。普段開発サイドは、「広告パフォーマンスを上げること」を目標にアルゴリズムの改善に取り組んでいます。しかし今回議論された改善案はそれとは異なる視点からの話で、広告主や代理店による“運用のしやすさ”を高めることを目的としたアップデートです。そのためエンジニアチームからは、今回のアップデートの取り組みに対して懐疑的な声も複数見られました。
しかし、事前に広告開発企画チームとのやり取りの中で、「ユーザー視点でのプロダクト改善」の重要性も把握していました。その考え方をチームメンバーにしっかりと説明し、理解してもらうことができたと思います。
クリエイティブ選出ロジックを改善、配信偏重が10%改善
MZ:課題解決に向け、具体的にどのような改善を行ったのか教えてください。
西尾:通常の場合、広告配信時には、システム側で無数にある配信可能な広告群の中から、パフォーマンスが高い広告をある程度の数にまで絞り込むステップがあります。大量の広告を短時間で処理するために“軽量な計算”で処理を行う箇所なので、「このステップに問題があるのではないか」と仮説を立てました。その結果、クリエイティブの偏りが起こる部分を発見。他の配信に影響を与えない範囲でパラメーターを修正し、クリエイティブ選定のバランスが良くなるようにチューニングを行いました。
佐藤:このチューニングを踏まえ、2024年11月から年末にかけてクリエイティブ選出ロジックを大幅にアップデート。クリエイティブに関する二つの課題を改善しました。
一つ目の「特定のクリエイティブ配信が偏ってしまう」という課題に対しては、今回の改善で「効果の高い広告に配信が偏る」ことは前提としつつも、まだ十分な実績が割り当てられていない広告も一つのキャンペーン内でフラットに配信が行えるように調整。これにより、配信偏重は10%改善し、配信ユーザーや枠に合わせて適切なクリエイティブに配信が分配されるようになりました。
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もう一つの「運用にあたり工数がかかる」という課題に関しても、今回の改善で一つのクリエイティブに対するキャンペーンやAdグループごとによる効果差を少なくすることに成功。具体的には、類似キャンペーン間におけるクリエイティブの一致率が33%改善しました。これにより、複数キャンペーンを立ててクリエイティブ検証を行う必要がなくなり、運用担当者様による手動調整の手間を大幅に削減させることができました。
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ユーザー側が感じるアップデート後の変化
MZ:アップデート後、運用する中でどのような変化が感じられましたか?
野口:改善後は、効果の高いクリエイティブが中心となりつつも、それだけに偏ることなく配信されるようになりました。また、バナーとクリエイティブの組み合わせが同じであれば、別キャンペーンでも同様の効果が得られています。
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アップデート前のキャンペーン(上段)と、アップデート後の類似するキャンペーン(下段)のそれぞれで、三つのクリエイティブ(CR)の配信比率を示した図。上段に比べ、下段ではクリエイティブごとの配信数、パフォーマンスに差が生まれにくくなったことがわかる
野口:これに関連して、「クリエイティブの枯れ問題」も改善しました。複数の広告配信で獲得できるようになったことで、成果の上がるクリエイティブであれば数ヵ月後でも変わらず効果を発揮し続けることができています。
運用工数に関しては、以前であればキャンペーン複製時にクリエイティブを再度入稿しなければいけなかったのですが、今では中身のクリエイティブも一緒に複製できるようになり、工数削減につながっています。
浅香:仰られた通りの効果により、「獲得効率の良いクリエイティブがなくなった時の不安感が解消された」という声を多くのクライアントからいただいています。
一つのクリエイティブに配信が偏るリスクが分散され、複数配信でユーザーを獲得できるようになったためです。これにより、高い成果のクリエイティブ制作にこだわる必要がなくなり、余裕をもって次の施策に取り掛かれるようになっているようです。
久保田:私が実感しているのはUIの改善です。改善前は他の広告媒体の管理画面と大きく異なり玄人向けのユニークなものだったため、扱える人が限られていました。しかし、2024年7月に管理画面のUIが刷新され他社管理画面とも近いデザインになったことで、誰にとってもわかりやすい仕様に。他の運用担当者でも非常に使いやすくなり、新たな運用担当者を育成しやすくなったと感じています。
チームごとに共通言語が違うからこそ、問題点を咀嚼して共有
MZ:ディスカバリーが今後のスマートニュースやSmartNews Adsに期待していることを教えてください。
野口:私たちの要望に真摯に向き合ってくださり、アップデートいただけたことは本当にありがたいと思っています。とはいえ、改善してもらえれば利便性がより上がると感じている点は他にもあるため、今後もご相談していきたいです。
久保田:広告配信先の選択肢が複数ある中で、SmartNews Adsを選ぶ最大のメリットは「初動からしっかり獲得ができ、小規模の投資で検証ができるソリューションであること」だと思います。この強みを維持しつつ、さらに進化していくことを期待しています。
MZ:スマートニュースとして考える、今回の取り組みから得られた知見や今後の展望を教えていただけますか。
西尾:以前であれば現場からの改善要望を聞いても、その背景にある課題を深く理解できないことが少なくありませんでした。ですが今回の取り組みを通じて、開発サイドでも現場での課題をしっかりと理解した上で改善に取り組むことが、プロダクトを成長させるには重要であると実感しました。
浅香:私も西尾と同じで、本プロジェクトを通して開発サイドとの密な連携の重要性を痛感しました。同じ社内の中でも営業サイドと開発サイドとの間では使っている「言語」が大きく異なります。その事実をしっかりと把握して、「プロダクトが抱える問題点」を咀嚼して伝えることはプロダクトや会社の成長には必須でしょう。私自身もクライアントの想いを社内に伝え、SmartNews Adsをより良いプロダクトにするために日々精進したいです。
佐藤:各業種の方々の声を伺い、その都度「求められていること」や「改善すべきこと」について社内の各プロフェッショナルの知見を持ち寄り、理解を深めることがプロダクトの成長には大切だと思います。
それを行える組織が私たち「広告開発企画チーム」です。今回の取り組みを基にこうした取り組みを各領域で続けていき、国内のマーケットニーズを最優先にスピード感をもってプロダクト開発に取り組んでいこうと思います。
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