爆発的な人気を得た企画/現在では欠かせない企画“2軸”とは
━━これまでに最も反響があったショート動画はどれでしょうか。
稲葉:再生回数が最も多い動画は、2022年10月に配信した「お皿の行方」です。食べた後に「皿カウンター水回収システム」に投入されたお皿はどこに行くのかを淡々と映した動画なんですが、これは本当にバズって現在では4,600万回を超える再生数となっています。
稲葉:それをきっかけにチャンネルも話題になり、2023年7月には登録者数10万人を達成しました。そのタイミングで私が広報部へと異動に。登録者10万人を超えて、さらにそこからチャレンジを続ける中で、よりYouTubeに専念できる環境を整備いただいた、というイメージです。
━━ショート動画で爆発的な人気を得るまで、時間がかかったわけですね。
小坂:そうですね。おそらく他の企業だと、1年やって成果が出ないのであれば止めるという判断になると思います。ですが、くら寿司は新しい提案や取り組みについて非常に前向きな企業風土があります。結果が出るまで見守っていただいたおかげでショート動画に行き着きました。早期打ち切りになっていたら、ショート動画にチャレンジできなかったと思います。
━━ショート動画の企画戦略、メッセージの軸を教えてください。
小坂:主に二つの軸があります。くら寿司では月に2回の商品フェアを実施しており、それを告知するのがショート動画のベースです。ただ、それだけではなかなか多くの方に視聴いただけないので、よりくら寿司を楽しんでいただける「くら寿司の楽しみ方」も提案として発信しています。具体的には商品のお召し上がり方をアレンジする提案のほか、くら寿司独自の人気サービスである「ビッくらポン!」の当たりを最大化する方法などです。
少人数でも配信頻度は譲らず。内製がもたらした価値は?
━━チャンネルの運営体制についても教えてください。
小坂:スタート時、当然のことですがYouTube企画に大きな予算はありませんでした。そこで出演兼企画を担当する稲葉と、岩澤を中心メンバーとしつつ、動画編集の面では、販売促進部のパートの方々に協力いただくことにしました。
動画編集の手を増やしたのは、配信頻度目標を「2日間に1回」としたからです。1週間に1度のペースだと間が空きすぎて忘れられてしまいますし、認知度を上げるためにも定期的、かつ高頻度の配信は必須でした。一方、販促業務を兼務しながらの企画立案や動画撮影はやはり難しいものです。パートの方々は元々チラシ制作などの販促業務が本業ですが動画編集ソフトの使い方を覚えていただき、手が空く時間で編集をお願いすることにしたのです。先述の通りの経緯で広報目線もあると良いとの考えから、全体を見る役目として私も関わるようになりました。
━━内製で進めていたのですね。
小坂:はい。くら寿司の企業文化として「まず自分でやってみよう」という社風があります。先ほど「大きな予算がない」と説明しましたが、実はそれだけでなく、新しいことをやる時には「まず自分たちでやってみる」ことを大切にしています。これも内製を後押ししました。
新しい取り組みで、コア業務を外部に委託してしまったら、自分たちにノウハウが蓄積されません。そしてやり方がわからなければ、工夫のしようもない。新しいことを自分たちだけで全部やるのは大変ですが、元々ある現場知識に新しい経験が備われば、外部にお任せするよりも本質的なコンテンツの企画・制作ができます。
現在はYouTubeの運営にも予算をいただけるようになり、一部の編集業務は外部に委託していますが、その際に「こういう見せ方をしてください」と演出などの要望を細かく伝えられるのも、内製による経験が活きていると感じます。
