“CX部”は「効率化の誘惑」に流されない部署
──鷲頭さんは、CPO(最高製品責任者)兼、CX(顧客体験)部 部長でいらっしゃいますよね。CX部は、どういった役割を担われているのか教えてください。
CX部は、顧客体験の一貫性を守る「番人」のような位置付けだと言えます。基本的には広告配信も自社で行い、サービス登録からご注文、料理のお届けから食べていただくまで、どんなコミュニケーションが必要なのかを常に考えています。

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加えて、売上額や継続率、顧客獲得単価などをKPIとして定め、事業の成長を担うことがミッションです。プロダクトとマーケティングを密接に連携させながら、集客から機能開発までサービスのグロースを一貫して担っています。
──なぜ、そのような体制にしたのでしょうか?
CX部を設けた理由は、弊社がキッチンを持っていることと関係があります。製造業は、製造効率を追求してしまうリスクがあります。そうなると、当然ながら「冷凍食品のほうが断然効率が良い」という話になる。効率を追求し美味しさが犠牲になれば、結果としてお客様が離れてしまうでしょう。その懸念を初期の段階から持っていました。
だからこそ、お客様の立場に立って深く考える部署を設けて、効率化の誘惑に流されない部署にしたかったのです。それが、お客様に対して接点を一気通貫して責任を持つCX部を設けた背景です。
広告施策の相互レビューとリサーチで「顧客視点」を醸成
──広告配信に関してもCX部のメンバー全員が関わっているのでしょうか。
基本的にはみんなで見ています。ここでのポイントは、CX部の全員が「顧客視点」で考えられる土壌ができている、ということです。獲得担当になると、獲得単価や獲得数のみを見がちになる恐れがあります。ところが、当部署では継続率まで見る必要があるため、「単に獲得するだけではダメだ」とすぐにわかる。その結果、弊社のサービスを喜んでご利用いただける方を集める視点が自然と備わります。
実務面では、CX部では必ず同僚間で相互レビューする、というルールを設けています。レビューは大きく3段階に分かれていて、まずは、A4一枚程度にまとめた案件の概要をレビューします。ここでは主に、ビジネスとしての筋やロジックが通っているか、メンバー2人からレビューを受けます。次の段階が、上司が行う「マネジメントレビュー」です。ここでは主に、事業としての優先順位をチェックします。最後に来るのが実装のレビューで、商品の仕様やクリエイティブをデザイナーやエンジニアなどがレビューします。
このように3段階に分けている理由は、そのレビューアーが責任を持つべき領域以外にこだわって企画が止まることを避けるためです。たとえば、デザイナー以外がデザインの色使いに過度に訂正を求めるなどです。そして何よりも、他の人の仕事をレビューすることは自身の成長にも寄与します。それによって自身の施策の質も高まります。