顧客が「意見を投稿するメリット」を実感できる設計とは
昨今、円安や原材料高にともないメーカーや流通業界でも家計を圧迫する値上げが相次いでいる。宮本氏は「顧客最優先主義に立ち返った時に我々に求められているのは、企業が売りたいものをただ単に安くしたり値上げしたりすることではなく、いかなる時もお客様の暮らしを支え、買い物の楽しみを提供すること」とし、ドン・キホーテでは「マジ価格」という施策を行っている。
マジ価格とは、具体的にはマジボイスで高評価だった商品や顧客がお勧めする商品など、大多数の顧客が欲しい商品を値下げし、より顧客が求めやすい価格で提供する取り組みだ。
「マジボイスに自分が欲しいものを投稿すると、その声を聞いてもらえて求めやすい価格で提供してくれる。それならば積極的に投稿しようというお客様の行動変容が生まれていきます」(宮本氏)
また、特にリテール企業の場合は、アプリの機能をはじめとした不満や買い物に関することはしっかりとキャッチし改善していくことが重要だと宮本氏。実際に集まる声は商品についてだけではなく、アプリや店舗サービスなど多岐にわたっている。このように、顧客にとって「声を上げることがメリットになる」と実感できる工夫が設計の中に組み込まれ、多くの評価や要望を集めることにつながっている。
データのミスリードという罠に陥らないために
次に、顧客の声というデータの分析の取り組みについて宮本氏は解説。顧客から寄せられる声は、分析・活用しないと集める意味がない。コメントに関する細かい分析はもちろん、利用頻度などの顧客情報や購入履歴も、コメント内容と紐づけた形で分析することが重要だ。
宮本氏によれば、マジボイスをリリースする前は、商品に対するダメ出しや意見がその商品を買った顧客によるものなのかわからなかったという。加えて、データのミスリードも陥りがちな課題だった。
たとえば、ある食品に関して「もっと味を濃くしてほしい」という声があり、その声を受けて味を濃くするケース。しかし声をよく分析すると、ごく一部の層が濃い味を求める声を挙げており、大多数の顧客は現状のままで満足していた。
このような少数派の意見を拾い上げ、間違った分析をすると、結果として商品が売れなくなることもある。宮本氏は「そのようなミスリードにならないよう、お客様の属性とコメントの内容は紐付けて分析した上で、活かし方を慎重に検討しています」と述べた。
