JR九州『JQ CARD』のさらなる成長・拡大を目指して
九州旅客鉄道(以下、JR九州)は、『JQ CARD』というクレジットカードを発行している。JQ CARDは提携するカード会社6社が発行する24種類からなるクレジットカードだ。2010年3月に会員募集を開始し、現在の効会員数はおよそ90万人(2025年3月時点)。九州だけでなく、東京在住者3〜4万人にも保有されている。
JR九州グループは、九州全域に鉄道網を持つ企業として、鉄道・新幹線をコア事業としながら、駅ビル・ホテルなどの不動産、流通・外食、建設など複数の事業を展開している。JQ CARDでは、それらのアセットとの連携を強化。駅ビル施設(アミュプラザ)での買物割引や、JQ CARD専用きっぷを提供している。また、貯まったポイントは駅ビルで利用でき、新幹線・特急に乗れる限定きっぷとも交換できるなどの特典もある。

そんなJQ CARDのさらなる成長を目指して、2024年よりスタートした、マーケティング戦略の立案~実行のプロジェクト。その支援にあたっているBrandismの木村氏は、日本の成熟した市場でのマーケティングの課題について次のように話す。

「マーケティングでは、市場や顧客行動、ROIなど様々な指標で数値化が進んでいますが、ブランド指標については、多くの企業がまだ指標化できていません。定量化できている企業があったとしても、それがどう売上と利益につながっているのかを見極めるところには課題があると考えています」(木村氏)
JR九州は、定量化にフォーカスし、ロジカル思考で戦略を作っていくBrandismに共感。定量化の際に必要となる指標の設計や、戦略の策定を進めてきた。
あらゆる指標を定量化し、振り返り可能な状態に
JQ CARDのマーケティング戦略策定にあたり重視したポイントは、主に次の4つだ。
1.あらゆる指標を定量化し、全ての施策をレビュー可能にすること
2.データの数値化・定量化を行い、そこから顧客インサイトを捉えること
3.単年の結果を得ながら、3年後・5年後・10年後を見据える、短期的成果と長期的視点を両立させること
4.戦略・広告・メディアなど、一気通貫したパートナーとして取り組むこと
この中で、山田氏は特に「あらゆる指標を定量化」という点を強く意識したと話す。

「全てを定量化できるわけではありませんが、ブランドイメージなどに何らかの定量性を持たせることで、振り返りができるようになります。指標の妥当性を検討しながら定量化を進めていくことは、私にとってもチャレンジングな取り組みでした」(山田氏)