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【特集】“テレビ”はどうなる?

テレビは「主」から「従」へ 横山隆治氏が考える、脱“テレビ1強”時代の広告コミュニケーション

求められるのは脱テレビではなく、テレビ発のプランニングからの脱却

 ところで冒頭のフジテレビのCM引き上げに話を戻すと、引き上げたスポンサーはこの件を経営会議にかけたはずです。そうなると引き上げたことで「売上に影響があったか?」と経営層は確認されたことでしょう。もちろん他局に出稿していますから、「売上に影響はありません」と回答されたはずです。ここで勘違いしてはいけないのですが、テレビの効果は短期的に現れるものではなかったということです。

 以前、ある外資系食品会社が一度テレビCMをやめたことがあります。半年くらいはまったく売上が変わらず、「なんだ、テレビCMは効果ないではないか」と言っていたところ、半年過ぎてからじわじわと売上が下がっていき、店頭プロモーションを行ってもあまり効果が出なくなりました。慌ててテレビCMを再開しましたが、元に戻るまで1年かかりました。

 こうした時間軸の長い効果は、テレビにしかないものでした。しかしテレビの視聴率がどんどん落ちていき、かつ視聴層が高齢者に偏る今、この効果すら期待できなくなります。

 なんのプロモーションもしなくても売れる量(=基礎的な売上)を「ベースライン」と呼ぶことがあります。このベースラインを維持拡大するのはそのブランドのコミュニケーション資産です。これに一番寄与するのは今のところテレビCMだけだったのです。そのほかのメディアではこの効果が立証されていないのです。

 しかし、これからはテレビ以外にもこの長期的なコミュニケーションストックを求める必要があります。筆者はこのコミュニケーションストックはアドストック(広告によるコミュニケーションストック)と、SNSによるレピュテーションストックに大きく分かれると思います。つまりテレビが担っていたコミュニケーション資産によるベースラインの維持は、今後はSNSで担うものになるかもしれないのです。

 フジテレビからCMを引き上げたことから、短期的な売上への影響を見て単純に経営層がテレビの効果を疑うことが予想されます。ただ、だからといって安直に「ではYouTubeへ出稿先を変えよう」とするのではなく、「テレビCM案からスタートするコミュニケーション開発を見直そう」となってほしいのです。

 テレビ1強時代の広告コミュニケーションは、一度しっかり作ってしまえばあとは横展開するだけだったので、シンプルで作業が楽でした。しかし脱テレビ1強を考えると、世の中の動きや消費者の反応を見ながら、その時々に合ったコミュニケーションを瞬時に展開していく必要があるため、複雑で面倒な印象を持つでしょう。実際そうなります。しかし今はAIという強い味方がいます。人だけでやることだけ考えて「面倒でとてもできない」とばかり思考しないで、トライする広告主が勝利するでしょう。次の仕組み化をいち早く遂げた広告主がそうでない広告主に大きな差を作るでしょう。

 仕組み化ができないと、ブランドのキャンペーンごとにいちいち「仕掛け」を考えないといけません。そんなことをしていたらマーケティングコストが爆上がりします。

 賢い広告主は必ずこうした方向に進みます。一方、テレビ局は大きな予算をテレビに投じていた広告主がテレビを「主」としない次の広告コミュニケーションの装置化に動くことを前提に、何が起こっていくかを理解して、行動することです。

 テレビ局の方は、図表4のYES/NOチャートを一度やってみてください。みなさんの「テレビのこれから」が少し見えてくるかもしれません。

図表4
図表4

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この記事の著者

横山 隆治(ヨコヤマ リュウジ)

横山隆治事務所 代表取締役
ベストインクラスプロデューサーズ 取締役 ファウンダー
トレンダーズ 社外取締役

1982年青山学院大学文学部英米文学科卒業。同年、旭通信社(現・アサツー ディ・ケイ/略称:ADK)に入社。インターネット広告がまだ体系化されていなかった1996年に、日本国内でメディアレップ事業を行う専門...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

楳田 良輝(ウメダ ヨシテル)

株式会社プログラマティカ 代表取締役社長

関西学院大学卒。広告会社で営業部門を経験後、経営及び人事部門でデジタル領域への投資・事業戦略や組織・制度変革等を担務する。メディア部門を担当後、デジタルエージェンシーを経てコンサルティング会社に経営参加。大手広告主に対するマーケティング・コンサルティング業務等に従事する...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2025/05/26 09:30 https://markezine.jp/article/detail/48805

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