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なぜ電通ランウェイは分業体制を採らないのか?領域を超え活躍する「マルチスキル人材」が生まれる理由

 電通グループの中でも、メディア起点のソリューション提供に強みをもちながら、ブランドエクスペリエンス領域へと事業を拡張する電通ランウェイ。同社では営業担当一人ひとりが、メディアプランニングからクリエイティブ、分析に至るまで、プロジェクト全体をリードするマルチスキル人材として活躍する。領域ごとに分業体制を敷くマーケティング企業が多い中、なぜこのような体制が実現できているのか、そしてマルチスキルな人材をどのように生み出しているのか。同社の代表取締役を務める鈴木氏と執行役員の湯川氏に話を聞いた。

電通グループの“スタートアップ”

MarkeZine編集部(以下、MZ): まず、電通ランウェイの事業内容とお二人の役割をお聞かせください。

鈴木:当社は電通グループ100%子会社として2019年に設立されました。まだ7期目ですので、グループ内ではスタートアップの位置付けになります。

 クライアントは外資系企業の占める割合が比較的大きくその領域も、飲料・ヘルスケア・ヘアケア・OTA(オンライン旅行代理店)・動画配信プラットフォーム・ECサイト・飲食チェーン・IT関連まで多岐にわたります。メディアコミュニケーション業務を根幹に据え、クリエイティブやPRまで一気通貫で提供し「ブランド体験(ブランドエクスペリエンス)をどう作るか」を重視しながら事業展開を行っています。

 私自身は1989年に電通に入社して以来、主に営業やBP(ビジネスプロデュース)に従事したのち、2024年に電通ランウェイの代表取締役社長に就任しました。

株式会社電通ランウェイ 代表取締役社長執行役員 鈴木篤氏
株式会社電通ランウェイ 代表取締役社長執行役員 鈴木篤氏

湯川:私は、当社の主にソリューション領域を担当しています。クライアントが一番知りたい生活者動向と環境分析から、最適なソリューションを開発することを追求してきました。マーケティング領域を中心にクライアントに支持されるソリューションを開発し、事業貢献をすることが電通ランウェイ、ひいては私の使命だと考えています。鈴木とは、電通時代から長年仕事をともにしてきました。

株式会社電通ランウェイ 執行役員 湯川昌明氏
株式会社電通ランウェイ 執行役員 湯川昌明氏

分業ではなく、「マルチスキル人材」がプロジェクト全体を推進

MZ:電通ランウェイの支援体制は特徴的だと伺いました。詳しく教えてください。

鈴木:クライアントのフロントに立つ「プロデューサー集団」として、戦略のデザイン、コミュニケーションプランニングはもちろん、外部との協業も含めクリエイティブ制作、データ分析に至るまで、プロジェクト全体を先導できるマルチスキル人材を多く有することが最大の特徴です。最適なスタッフをチームに組み込み、戦略的かつスピーディーにプロジェクトを動かしています。そぞれのれ領域に専門人材を割り当て、分業して支援する企業が多い中、当社はユニークなスキルを持った人材が多くいることでこの体制を実現できています。

 また、電通グループが保有している膨大な消費者データと、その分析をサポートする多彩なツールを活用できる強みがあります。電通グループの一員として、あらゆる専門領域をカバーできる、約120ヵ国以上に広がる国内外のネットワークを保有している点も特徴ですね。

湯川:外資系のナショナルクライアントは、世界基準の高度なマーケティング対応に加えて、スピードも求められます。また世界規模で事業を展開する中、国内の市場にフィットする戦略視点も重視されます。当社の人材は、最先端のマーケティングを理解し、今後の国内のマーケティング業務全域に関わるスキル習得の機会を多く得ています。

 そのような環境で戦略立案から関わり、戦略と一致したエグゼキューションを実行する。まだまだ至らないところもありますが、そもそも個々がマルチスキルにならないと対応はできません。各自が任された役割を果たすのはもちろんですが、チームとしてパフォーマンスを上げるには、個々がどれだけ役割以上のことができるかに尽きると思います。当社は様々なクライアントの対応で打席に立つ機会も多く、個人として成長できる環境が充実しているといえます。

MZ:マルチスキル人材というキーワードが出ましたが、鈴木さんが考えるマルチスキル人材とはどういった人を指すのでしょうか。

鈴木:問題解決能力、コミュニケーション能力、柔軟性、工夫、専門知識の5つをあわせ持つ人ですね。そして当社には、必然的にそういう「人財」になれる環境があると思います。

なぜ、マルチスキル人材が育つのか?背景にある「贅沢な環境」とは

MZ:必然的にマルチスキル人材になれるというお話がありましたが、どのような背景からそうした環境になったのでしょう。

湯川:当社は元々、マーケティング領域の中でもメディア領域を核としてクライアントのサポートを行ってまいりました。しかし、顧客の事業貢献を思考すればするほど、メディア領域だけでは解決できない課題が出てきます。それはクライアントのブランド体験に関わるクリエイティブ領域であることもあれば、ECや実店舗など購買や販売促進領域設計のケースもあります。同時に、施策と成果を継続管理していく必要も出てきます。

 設立7年目ということもあり社員数が多くはないので、そうした複合的かつ多くの施策を全体視点・個別視点で思考し提案、PDCAを少数精鋭のチームで回していく中で、必然的にマルチスキル人材として成長できる環境になったともいえると思います。

鈴木:電通グループのリソースを縦横無尽に活用できることが、そのまま当社の知見となり、自然と従業員のスキルにも結び付いていったんでしょうね。

湯川:デジタル周辺だけに特化しているわけではなく、生活者が目にするコンテンツ広告に関する実績が豊富で、160名ほどの規模の会社(2025年5月末日現在)ゆえ一人ひとりが自由にできる裁量も大きいですよね。電通グループの幅広いネットワークも活用できるので、当社に入れば広告業界においてどこでも通用できる高いマルチスキルを身に着けられるのではないでしょうか。

 チャレンジを重ねて実践力を鍛えながら、積み重ねたノウハウや電通グループのネットワーク・リソースを活かせる、贅沢な環境といえるかもしれません。

マルチスキルを実現する「インテグレーター」が活躍

MZ:電通ランウェイではどのような方が現在活躍されていますか。

鈴木:入社後、広告業界の経験者と未経験者で2通りのキャリアパスがあると思います。経験者は自身が持つスキルを磨きつつ、案件を数多くこなしていく中で問題解決能力とコミュニケーション能力が備わっていきます。特に、クライアントのご担当者よりインプットをいただきアウトプットを出すまでの間に工夫や考え抜く力が非常に身に付くと思いますね。

 自分で考え抜く力が習慣化すると自然と吸収力は早くなりますし、未経験者であってもマルチスキル人材として早期に一定水準の仕事ができるようになります。

湯川:マーケティング領域は技術革新によって日々変化していくものですし、広範囲に及ぶため、クライアントに対して必然的に対応しなくてはならない仕事の幅が広がっていきますよね。

鈴木:昨今はコンサルティング的な立ち位置で広告ビジネスを行う企業も多い中、私たちはプロダクトやサービスなど、クライアントにとってど真ん中といえるマーケティングを着実に実践してきました。

 また、プロジェクト全体をリードしていく中で、クライアントとの契約・条件の交渉も必須になってきます。特に外資系企業の場合は、いわゆるScope of Work(作業範囲)が明確化されているケースが多く、我々が提供する価値やサービスを細かく設定し、お互いがWin-Winになる契約内容を模索しなければなりません。したがって、そのためのスキルやコミュニケーション技術も磨かれます。また外資系企業のクライアントが多いことから、どんな部門であっても英語力も活かせます。

MZ:現在7期目ということでしたが、実際にどのような人材が育っていますか。

鈴木:広告フロントに立ち、リーダーシップを発揮できる「インテグレーター」が多く育ちつつありますね。マルチスキルを体現しクライアントと電通グループのハブとなる人が多くいればいるほど、電通グループ内のスケールを活用し電通グループを一つのチームとしたメンバーアサインとディレクションを迅速に行えますので、対応スピードは格段に上がっていきます。大きな組織だとかさみがちな間接費などのコストも抑えられます。また、会議における“持ち帰り”も少なく、マルチスキルを備え持っているがゆえに迅速に対応できる点は、クライアントにも非常に喜ばれています。

湯川:個人はもちろんですが、チームだからこそマルチスキルも育つと思っています。幅広い知見とスキルがあるからこそ、お互いの領域を越境して切磋琢磨し合い、高いパフォーマンスが発揮できます。たとえ少人数であってもチームで連携すればより高い成果を出せます。

打席に立つ回数が多いからこそ身に付くスキル

MZ:人材育成について、どのような点を意識していますか。

湯川:当社では2030年に向けて中期経営計画「Expansion 2030」を策定しており、売上3.7倍、売上総利益2.9倍を目指しています。その目標を達成するため、現在社内の従業員が保有するスキルセットの可視化を行っています。その上で一人ひとりに適した研修プログラムや講義を用意し、高度な学びの場の構築を目指しています。

鈴木:会社が目指すものと従業員一人ひとりが目指すもの、両方が合致してこそよい成果があげられますので、インセンティブや人事制度も充実させています。また、個人が実現したいキャリアパスについても相談を受けますし、会社を挙げて支援していきます。個人の成長と会社の貢献を生むシナジー効果を期待しています。

湯川:どこの業界にもいえることですが、マーケティング業界はクライアントと生活者を取り囲むマーケット環境が劇的に変化し続けているため、過去のデータや分析を尊重しながら実践の中でしか学べないことも多いと思います。当社は様々な分析手法が可能なツールを備えていることはもちろんですが、お客様と相対する=打席に立つ回数が非常に多いため、知識・スキルを実践の中で効率的に学べる絶好のPDCA環境といえます。

 また、電通グループの多様な分析ツールを使えることも十二分なメリットでしょう。ここには、現在の環境分析はもちろん、今までグループで実行してきた豊富な事例が蓄積されています。そして、クライアントからのオーダーや提案から研鑽を積んだソリューションの幅広さは間違いなく国内一です。ゆえに、クライアントのテーマや課題に対して、広く網羅した選択肢の中から最適なソリューションの提案が実行可能なのです。また、AIによる戦略策定・実行によるサービス向上にも積極的に取り組んでいきます。

データやツール、ネットワーク、メディアなど、電通グループが持つリソースを駆使した支援を提供
データやツール、ネットワーク、メディアなど、電通グループが持つリソースを駆使した支援を提供(画像出典:https://www.d-runway.co.jp/synergy/

グループリソースを最大限活用しつつ、独自の支援を提供

MZ:最後に、今後の展望を教えてください。

鈴木:電通グループ内でも存在感をさらに高めていきながら、会社をよりスケールさせていきたいと考えています。少数精鋭で価値の最大化を可能にするチームをどう作っていくかを念頭に置きながら、強固な組織にしていきたいですね。

 また、国内だけでなくAPACへの進出も視野に入れています。従来は外資系企業の日本進出を支援してきましたが、そのノウハウを逆転用して、日本企業が海外進出するためのサポートも行っていきたいと考えています。

湯川:電通グループのリソースを活用しながら、今後ますます機動性を磨き、クライアントに向けて最適な支援を多様な選択肢から提供することを目指していきます。

鈴木:電通グループの各社は親子という関係ではなく、並列かつ対等にグループ会社が並んでいる体制です。そのため当社では、グループであることに縛られず独自性あるエージェンシーとして顧客を最優先に考え、最適な提案を実現できます。顧客にどう満足してもらえるのかを追求し、顧客ファーストな選択を今後も考え続けてまいります。

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この記事の著者

太田 祐一(オオタ ユウイチ)

 日本大学芸術学部放送学科を中退後、脚本家を目指すも挫折。その後、住宅関係、金属関係の業界紙での新聞記者を経て、コロナ禍の2020年にフリーライターとして独立。現在は、IT関係を中心に様々な媒体で取材・記事執筆活動を行っています。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:株式会社電通ランウェイ

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2025/05/30 11:00 https://markezine.jp/article/detail/49060