ヘアケア事業を、再び全社の成長ドライバーへ
MarkeZine:花王は、2024年4月にヘアケア事業の変革をスタート。ハイプレミアム市場への本格的な参入として、新ブランド「melt(メルト)」「THE ANSWER(ジアンサー)」をローンチし、また既存マスブランドのリブランディングも進めてこられました。この変革により、ヘアケア事業は好調に推移していると聞いています。
今回はこの事業変革をリードされている野原聡さんにお話をうかがいます。まずは、どのような背景・経緯のもとヘアケア事業の変革が始まったのか教えてください。
野原:背景にあったのは、10年以上続いてきたヘアケアカテゴリでのシェア減少です。このシェア減少には、国内のヘアケア市場の動向、消費者動向の変化が影響しています。

ヘアケア事業部 ブランドマネージャー 野原聡氏
ヘアケア市場の変化として大きいのは、やはりハイプレミアム製品(シャンプー本品1,400円以上)の成長です。ヘアケア市場全体は微増ですが、ハイプレミアム市場の伸長は続いており、直近ではヘアケア市場全体の約5割を占めるまでになっています。しかしながら、花王内でのハイプレミアム構成は、2023年時点では1%に留まっていた状況です。

MarkeZine:なるほど。ヘアケア市場でハイプレミアム製品のカテゴリがここまで伸びているのは、なぜなのでしょうか?
野原:大きく3つの要因があると分析しています。まずは「消費者心理の変化によるヘアケア製品のコスメ化」です。コロナ禍の外出自粛など行動が制限された時期の影響が大きく、多くの消費者の中で自分自身への投資意識が高まりました。結果、ヘアケア製品が“日用消費財”ではなく、“スキンケア”や“コスメ”と同様に扱われるようになってきました。多少価格が高くても品質や効果を重視する消費者が増えているのです。
2つ目は「SNSマーケティングの台頭」です。かつてのようにテレビCMに大規模投資をしなくても、消費者の声を通じて製品の認知を広げることが可能になりました。この流れはハイプレミアム製品から生まれています。
そして3つ目に「高利益商品を重視する流通の嗜好」も挙げられます。単価が高いハイプレミアム製品は流通側の収益にも大きく貢献するため、積極的に展開される傾向にあります。
MarkeZine:花王としては、ハイプレミアム市場でのシェア創出が喫緊の課題だったわけですね。
野原:はい。ヘアケア事業は、花王の中核事業です。再びヘアケア事業を全社の成長ドライバーへと押し上げるため、今回の事業変革でハイプレミアム市場への参画を本格化し、第一弾に「melt」、第二弾に「THE ANSWER」を投入してきました。
あわせて、マス(プレミアムマス/リーズナブルマス)市場における既存ブランド「merit(メリット)」「Essential(エッセンシャル)」「Segreta(セグレタ)」をリブランディングし、ヘアケア事業全体でブランド力を高めています。