「THE ANSWER」は当初想定の2倍以上の売上を記録
野原:感性マーケティングの一例として、THE ANSWERのマーケティングをご紹介したいと思います。
THE ANSWERは、「花王100年のヘアケア研究からたどり着いた、ヘアケアの答え」というブランドコンセプトを掲げ、誕生しました。ターゲットは、先述のマップでいうと「ローエネルギー(快適さ)」×「個人(社会的な向上)」の象限に属している方々で、より理性的な判断ポイントを重視する傾向があると分析しています。
THE ANSWERのターゲットイメージ
「誠実でバランスのとれた生活をしたい」というニーズを持つ自立志向の強い女性。髪が美しくなるという結果だけでなく、なぜ美しくなるのかという理由や根拠を求める特徴がある。
ヘアケア製品に対しては、製品の成分や栄養素に関する的確な情報を求め、理解することで納得したいと考える傾向が。また、歴史や実績などの信頼性に価値を見出す傾向もある。
こうしたターゲット層の特徴を踏まえ、THE ANSWERでは「機能“感”」を重視した戦略を採用しています。一見すると機能重視のブランディングかと思われるかもしれませんが、「機能」ではなく、あくまで「機能“感”」です。機能だけを訴求するのではなく、理性的な感情に訴えかけるブランド構築を目指しています。

MarkeZine:なるほど、機能ではなく「機能感」というのは面白いポイントですね。たしかにパッケージを見ると、「サラサラ」「うるおい」など日本語で機能を訴求するのではなく、数字や英語が並んでおり、「サイエンス感」が伝わってきます。
野原:具体的には、感情価値と整合性のあるパッケージデザインや、数字を効果的に活用する戦術を取っています。数字自体に意味があるというよりも、数字を使うことでロジカルかつサイエンティフィックな印象を持っていただけるようにする形です。
また、THE ANSWERのようなハイプレミアム製品では、よりデジタル重視のコミュニケーションを展開しています。THE ANSWERの場合は、製品の成分に着目した専門家やインフルエンサーの方々が自発的に情報を拡散してくれる現象が生まれました。花王の強みである技術力や成分へのこだわりが、美容感度の高い専門家やインフルエンサーの方々によって第三者視点で評価され広がることで、より信頼性の高い情報として消費者に届いているのです。実際、THE ANSWERは当初計画の2倍以上を売り上げ、非常に好調に推移しています。