各ブランドの知見を共有し、事業全体の底上げを
MarkeZine:冒頭でうかがった組織体制の変更も、THE ANSWERなど各ブランドの好調に繋がっていそうですね。
野原:そうですね。THE ANSWERが早くから成果を出せているのは、たしかに組織での取り組みも影響していると思います。たとえば、2週に1度実施しているSNSマーケティングのミーティングでは、直近のSNS広告のデータを分析し、みんなで改善策を議論しています。各ブランドで出てきた分析・改善案を全ブランドに共有することで、知見の蓄積を進めているのです。ある程度のパターンやノウハウが確立されており、それを新ブランドが活用することで、間違いなく初期段階からの成功確率が高まっています。
何より、ブランド横断的な学習サイクルが確立され、効率的なナレッジの共有が実現しているのは素晴らしいことだと思います。スクラム型で進めた事例を「横で見て、また横で見る」という連鎖的な学習プロセスが、事業全体の底上げにつながっています。

MarkeZine:この事業変革により、社内の雰囲気やカルチャーも変わってきたのではないでしょうか?
野原:相当変わったと思います。自分たちが思ったことを発案し、仲間と一緒にプロジェクトを作り上げていく。そして、それがスピーディに承認され、市場でも受け入れられていくと、やはりチームの士気が上がります。なにより、事業が成長していること・成果が出ていることを実感できているというのが、大きいのではないでしょうか。
昔から、ヘアケア事業は花王の中でも花形の部門でした。今回の変革にあたり私が最初にメンバーに伝えたのは「このチームを生活者だけでなく、他の事業部からも羨ましく思われるような、さらにはメディアにも取り上げられるようなチームにしたい」ということ。そのために、各ブランドのPRに限らず、花王として推進している事業変革そのものの発信にも注力しきました。最初に掲げた目標は50%くらい実現できているのではないかと感じています。
現ブランドを大切に育て、複数の方向性から事業成長を図っていく
MarkeZine:2025年春の新ブランドローンチで発表されていたロードマップは完了となりますが、ヘアケア事業変革のこれからについて、お聞かせください。
野原:現在はブランド育成の「第1フェーズ」にあり、新ブランドの確立を最優先としています。将来的には「第2フェーズ」として、様々な展開方法を模索していく予定です。
まずは一つひとつのブランドを丁寧に育て、顧客と売上を着実に増やしていきたいです。たとえば、THE ANSWERは現在約7,000店舗での取り扱いにとどまっています。一方、主力ブランドの「メリット」や「エッセンシャル」は約30,000店舗で販売されており、THE ANSWERにはまだ大きな伸び代があることがわかります。
このようにまずは現在のブランドポートフォリオを確実に育てることを基本方針とした上で、アイテム拡張やグローバル展開、新カテゴリへの進出など、複数の方向性から事業成長を図っていきます。