「スマドリでええねん!」誕生の裏側
米田:では続いて、スマドリという文化、「コト」のCM制作についてもお聞かせください。

宮﨑:スマドリのCMは2023年と2024年に制作しましたが、この概念が一言で伝わらないこと、受け手が何をしたら良いかもわかりにくいといった課題の解決が大きなテーマでした。
スマドリの概念を伝えようとすると、どうしても説明的で説教臭くなってしまいます。おもしろく自分ごと化していただくには、わかりやすさが重要だと考え、歌という形でコンテンツにするアイデアが生まれました。そして生まれたのが「スマドリでええねん!」でした。
2023年は飲める人も飲めない人も、様々な人がいるという多様性を伝えるCMとしましたが、2024年には、飲めない人や飲まない人によりフォーカスし、その人たちに何をしていただきたいのかをオリエンシートに落とし込みました。特に、飲めない人からの共感とは何かを深掘りし、「飲めない自分のままでいい」といったコピーで、お酒が飲めなくても飲み会を楽しめることをテーマに、新たなCMを制作しました。

「スマドリ」の認知度は50%に到達
米田:スマドリは「クールビズ」をベンチマークされているとうかがっていますが、クールビズと同様、認知度は3年で50%を超えたそうですね。
宮﨑:2023年3月にこのコミュニケーションを開始した際の認知度は約16%でしたが、2024年末には50%に到達しました。今後は、単に知っているだけでなく、クールビズのように自分の生活の中に取り入れていただくためにはどうすれば良いかを考えています。
米田:中村さんと宮﨑さん、お二人のお話しぶりからも、CD部の躍進ぶりが伝わってきます。望月部長、最後に、CD部が今後目指したいことについてお聞かせください。

望月:一言で言うと、「出会って良かった!」と共感され、購買行動につながる消費者コミュニケーションを実現していきたいと思っています。
タッチポイントが多様化し、狙ったターゲットがますます捉えにくくなっている現状では、さらなるインサイトの探求が不可欠です。同じブランドであっても、どのファネルにいるお客様かでインサイトは異なるため、効果的なクリエイティブもそれぞれ違ってきます。
CD部としては、よりパーソナライズされたコミュニケーションを実現するために、ファネル全体を俯瞰し、かつ各ファネルに応じたインサイトを突きながら、ストーリー性のあるメディアプランニング、コンテンツ開発を重要視し、取り組んできました。今後もお客様一人ひとりに深く響くコミュニケーションを追求し、アサヒビールのブランド価値をさらに高めていきたいと考えています。
米田からの「インサイト活用」TIPS
- 良いCMとは、(単に面白いとかインパクトがある、といった主観的な基準で決められるべきではなく)ユーザーの心を動かし購買行動に繋げられるか否かで判断されるべきである。
- 故に、CMの企画をする際も、放映するCMを決める際にも、ユーザーの声を反映できる仕組みがあると、CMの効果・成果は上がる。
- 良いクリエイティブを引き出すには、ユーザーインサイトの共有が不可欠である。
- インサイトがわかっていたとしても、その中で、ユーザーに伝えたい最重要ポイントを明確に優先順位付けし、シンプルに言語化して伝えることで、発注側とクリエイティブ側の齟齬がなくなり、良いクリエイティブが生まれやすくなる。
