航海に必要な「世界地図&ガイドブック」
MZ:本連載で取り上げてきた『マーケティングを学んだけれど、どう使っていいかわからない人へ』と、今回の『マーケティング手法大全』は、初学者にわかりやすいという点で共通しています。ペアとなる書籍のようにも感じますが、どのような違いがありますか?
西口:前著が「マーケティングでビジネスをどう切り開くか」の航海術の書だとしたら、本書は実際の航海に必要な「世界地図&ガイドブック」です。どこがどんな気候で、どんな動物がいて、どんな食べ物が手に入るのか。地域特性や暮らし方は、今いる場所と比べてどうなのか。現在地と行き先を確かめ、そこに行くのに何が必要なのかがわかれば、実務にもキャリア形成にも活かせます。
MZ:マーケティングの全体像の図を見て、前著に登場し本連載でも解説いただいたストラテジーマップが思い浮かびました。この2つの図は、どう使い分ければいいでしょうか。
西口:今回の全体像は、業務のプロセスです。一方でストラテジーマップは、新規顧客になったりロイヤル化したり離反したり、ブランディングの影響を受けたりと、顧客の状態変化を表しています。その変化を踏まえた戦略の地図なんです。そのため、両方を照らし合わせて業務に活用してもらえたらと思っています。


AIマーケティングが広がる時代に
MZ:『マーケティング手法大全』ではAIマーケティングの箇所も、見逃せないトピックだと感じました。どういった予測のもと執筆されたのですか?
西口:AIマーケティングの最終的なゴールは明確で、あらゆる情報をデータとしてAIに与えることで、業務プロセス全体をAIが代替・自動化するようになるでしょう。マーケティングの手法も最適なものを選んでくれますから、人間が試行錯誤して選ぶ必要がなくなります。
ただし、人間が要らなくなるわけではありません。今後のマーケティングにおける人間の役割を考える上で重要なポイントの一つは、AIが精緻化させ効率化を進める部分を、ブラックボックスにしないことです。飛行機の自動操縦が進んだからといって、パイロットが不在にはなっていませんよね。AIを使う側として、マーケターがしっかり舵取りして調整する必要があります。
そしてもう一つは、人間の心理に向き合うことです。N1分析などを通して、潜在意識も含めた顧客のインサイトをつかむことが、人間ならではの役割として残っていると考えています。
MZ:最後に、入門者の方を含めて、この本をどのような方にどう使ってもらいたいかお聞かせください。
西口:本書の内容はできるだけ平易にしましたが、決して入門者に限った本ではありません。中堅マーケターやそれ以上の方、またマーケティングに興味がある方やマーケ以外の職種のビジネスパーソンまで幅広く、知識の習得に活用いただけると思います。同時に、マーケの人材や責任者を採用する立場の方なら、「この人は何に強いのか」を判断するにも役立ちます。
本書の読者特典コンテンツ(詳細は本書p285)や派生する内容などを、私が運営する無料の学習コンテンツ「Wisdom-Beta」で発信しているので、本書と合わせて活かしてください。学びに終わりはありませんので、AIを含め、ぜひこれからも読者の皆さんには学び続けていただけたらと思います。