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第113号(2025年5月号)
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データで市場を読み解く

売上の裏にある「購入のされ方」を理解する、間口・奥行き分析を解説!

間口・奥行きを比較するための方法

 間口と奥行きを比較するにあたり、「バブルチャートによる比較」、「インデックスツリーによる比較」の2つをご紹介します。場面によって使い分けることで、適切な粒度の情報を伝えることができ、マーケティング活動における今後のアクションにつなげることができます。

バブルチャートによる比較

 「視覚的かつ直感的に比較したい」場面に適しているのがバブルチャートです。

 横軸に間口、縦軸に奥行きをとり、バブルの大きさで売上を表現します。これにより、商品ブランドの「広さと深さ」がひと目でわかる図が描けます。ちなみに、バブルチャートはExcelでも簡単に作成することができます(図表2)。

【図表2】バブルチャートによるアウトプット例:横軸、縦軸、バブルの大きさのそれぞれに該当する数値を選択した上で、挿入タブ内の「グラフの挿入」→「バブル」を選択
【図表2】バブルチャートによるアウトプット例(Excelでは横軸、縦軸、バブルの大きさのそれぞれに該当する数値を選択した上で、挿入タブ内の「グラフの挿入」→「バブル」を選択すると作成できる)

 視認性が高く、ポジショニングを俯瞰できるため、売上に直結する間口・奥行きの構造を1枚で素早くキャッチアップすることができます。そのため、役員や経営層、マネジメント層へのプレゼンや共有において適した手法と言えるでしょう。

インデックスツリーによる比較

 より細かい指標で構造を解像度高く捉えたい場合には、インデックスツリーの活用が有効です。

 インデックスツリーは、自社のビジネスモデルやプロダクトに沿って分解していくのが望ましいです。たとえば、売上を最上位におき、まずは売上を「購入人数」と「1人あたり購入金額」に分解します。「1人あたり購入金額」はさらに、「1回あたりの購入金額」と「1人あたり購入回数」に分解できます。さらに、「1回あたりの購入金額」は「平均金額」と「1回あたり購入数量」に分解できます(図表3)。

【図表3】売上を分解したインデックスツリーの例
【図表3】売上を分解したインデックスツリーの例

 指標を細かく分解して数値を追うことで、問題点やボトルネックを正確に特定できます。そのため、現場担当者が状況を正確に把握し、改善アクションにつなげたい場合に非常に有効です。

実践編:5つのブランドを比較してみよう

 ここからは実際のデータを扱いながら、間口・奥行きを比較してみましょう。今回もマクロミルの消費者購買履歴データ「QPR」を用い、ブラックコーヒーに関する5ブランドを題材として取り上げます。

STEP1:ブランド間で比較する

 ブランド間で指標を比較すると、市場において当該ブランドがどのような立ち位置なのかを把握できます。つまり、「他ブランドと比較して、売上や間口の広さ・奥行きの深さにおいて優位性があるのか、それとも劣っているのか」の理解につながります。

 まずはバブルチャート用いて、ブランド間で間口・奥行きを比較したときに、どのような読み解きができるのかを考えます(図表4)。

  

【図表4】5ブランドの間口・奥行きに関するバブルチャート
【図表4】5ブランドの間口・奥行きに関するバブルチャート

 円が大きい、すなわち購入金額が大きいブランドは、ブランドBとブランドDであることがわかります。また、他ブランドと比べて購入率も高いことから、間口の広さという点でも優れていると読み取れます。

 一方で、購入者あたり購入金額が最も大きいのは、バブルが最も上に位置するブランドAです。ブランドAは間口という観点では他ブランドより劣りますが、利用の深さ、すなわち奥行きにおいては優位性があると言えるでしょう。

STEP2:時系列で比較をする

 間口・奥行きの各ブランドの現状の立ち位置がわかったところで、さらに間口と奥行きの状況を解像度高く理解するために、時系列による比較を見てみましょう。ここでは、インデックスツリーを用いて指標を分解しながら、そのトレンドを追ってみます(図表5)。

【図表5】5ブランドの購買指標に関するインデックスツリー
【図表5】5ブランドの購買指標に関するインデックスツリー

 最も上流にある「100人あたりの購入金額」で見ると、ブランドA、ブランドB、ブランドDが前期と比べて値を伸ばしていることがわかります。さらに細かく指標を分解してみていくと、ブランドAとブランドDは、「購入者あたりの購入回数」がそれぞれ111%、115%に成長していることがわかります。前年と比較して、リピートを上手く取りこめていることが、購入金額の好調を支えていると解釈できるでしょう。

 一方で、ブランドEは「100人あたりの購入金額」が、前期比で92%にとどまっています。これもツリーを辿ると、購入率が前期比96%と不調であることが主な原因であるとわかります。現場担当者は、単に売上が落ちているという事実だけでは具体的な打ち手まで落とし込むことが難しいですが、このように指標を分解することで、特に購入率の改善が求められていることが明確になり、新規顧客の獲得施策や初回接点の質の見直しといった、より焦点を絞ったアクションへとつなげていくことが可能になるのです。

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何を根拠にどう意思決定すべきか

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この記事の著者

上田 拓朗(ウエダ タクロウ)

株式会社エイトハンドレッド データサイエンスユニット アナリスト
西日本旅客鉄道株式会社を経て、2022年に株式会社エイトハンドレッドへ入社。以降、業界横断的に購買行動データ、Webアクセスログ、アンケートデータなど多様なデータの分析案件に携わる。直近では、大手カード会社のマーケティング施策のパーソナライズ化、レジャー予...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2025/06/20 08:00 https://markezine.jp/article/detail/49227

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