2025年6月9日、総務省は国内で初となる「デジタル広告の適正かつ効果的な配信に向けた広告主等向けガイダンス」を策定し、公表した。
同ガイダンスは、広告主の広告担当者および経営層の双方がデジタル広告の流通を巡るリスクを経営上のリスクとして認識し、必要な取り組みを主体的に進める一助となることを目的としている。全文は総務省ウェブサイトで公開されている。
同ガイダンスは、デジタル空間における情報流通の諸課題への対処に関する検討会 デジタル広告ワーキンググループ(主査:曽我部真裕 京都大学大学院法学研究科教授)での検討を踏まえて策定された。きっかけとなったのは、2024年6月に問題となったSNS等におけるなりすまし型「偽広告」への対応要請だが、今回のガイダンスはより広範な課題に対応している。

同ガイダンスでは、偽・誤情報や違法アップロードコンテンツを掲載する媒体への意図しない広告配信によるブランド毀損や、アドフラウド(広告費の不正な詐取)により広告費が流出するリスクといったリスクへの対策を包括的に示している。
また、経営層の主体的な関与の必要性も指摘。現場担当者は広告単価の効率や獲得指標を重視することが求められる一方で、品質管理との両立に苦慮している。「対応する事で獲得効率を悪化させる可能性があると思ったから」という理由で、リスクへの対応を見送る担当者が33.3%も存在しており、現場担当者のみでリスクを防止することの限界や全社的な広告管理・内部統制、対策のためのリソース確保の必要性が求められているという。
広告主等が実施することが望ましい取り組み
さらに、広告担当者および経営層がデジタル広告を巡るリスクを共有した上で、広告主等が実施することが望ましい取り組みを示した。
ガイダンスは、生成AIの登場により偽・誤情報やbot、スパムコンテンツが容易に作成される時代において、広告主が段階的かつ継続的に対策を進めるための具体的な道筋を提示している。
まず体制構築では、5つのステップを示した。組織内の担当部署・担務者の明確化から始まり、リスク管理策の検討、広告管理方針の策定、契約段階での取り組み、そして配信状況確認まで、各企業が自社のリソースに応じて段階的に進められる構成となっている。

目標設定では、従来の成果指標(CTR、CPA、ROAS等)偏重から脱却し、品質管理指標(無効トラフィック率、ビューアブル率等)とのバランスを重視するよう促している。

具体的な対策として、JICDAQ認証を取得した事業者(2025年3月時点で178社)との取引を推奨。技術的対策では、アドベリフィケーションツールを汎用型、アドフラウド特化型、ブロックリスト提供型から、各社のニーズに応じた選択を示した。
配信先管理では、セーフリスト、ブロックリスト、予約型広告、PMP(プライベートマーケットプレイス)という4つの手法を提示。特にPMPは、欧米と比較して日本での浸透が遅れている現状を指摘しつつ、透明性の高い取引手法として推奨している。
さらに、年次報告書やホームページでの情報開示を求めることで、デジタル広告管理が企業の社会的責任の一環であることを明確化。これは投資家やステークホルダーへの説明責任を果たすとともに、企業価値向上にもつながる取り組みとして位置づけられている。
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