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【対談】松本健太郎から田岡凌へ「カテゴリー戦略」の理解を深める5つの質問

「カテゴリー」を優先するか、「ブランド認知」を優先するか

松本:ここまで、カテゴリーとはどのようなものかについてイメージを明確にしてきました。次にお聞きしたかったのが、カテゴリー戦略とブランドとの関係性です。マーケターは「強いブランドを作る」「指名されるブランドにする」という命題も抱えていますが、田岡さんは、両者の関係をどのように考えていますか?

田岡:カテゴリー戦略とブランド指名されるための戦略は、一体だと考えています。カテゴリーが突如生まれることはなく、まずロールモデルのような中心的存在があり、そこにカテゴリーが生まれます。そして、一番強くカテゴリーを広げ続けてきたブランドが、結果的に指名されるようになるのです。

 たとえば「インテントセールスといえばSales Marker」と言い続けることで、インテントセールスを実施したい企業はSales Markerを選ぶという状況が作られます。

 もちろん領域によって向き不向きはありますが、カテゴリーを作ること自体が、顧客から指名され、選ばれることに直結します指名検索を重視するマーケティングとカテゴリー戦略は違う切り口であるものの、極めて近い考え方だと感じています。

松本:田岡さんの書籍を読んで気づかされたのは、ブランドとカテゴリーの両方で想起されることができれば、カテゴリーNo.1ブランドのチャンスは2倍になる、つまり両取りできるということです。

 ただし1つ気になったのは、カテゴリーNo.1でなくなると、その優位性は一気に崩れるのではないかという点です。フリマアプリ市場で言えば、フリル(現:楽天ラクマ)が市場を作って、後発のメルカリが追い抜いたように、カテゴリーの創造者がNo.1を維持できるとは限りません。これについてはどう考えていますか?

田岡:創出しようとしているカテゴリーのルールを理解することが、非常に重要だと思います。

 たとえばフリマアプリは、フリルもメルカリも……ではなく、多くのユーザーにとって有用なものが1つあれば十分ですよね。さらにネットワーク外部性が働くため、出品者も購入者も増えるほど価値が上がります。いわゆる“Winner Takes All(勝者総取り)”の市場で、短期で誰が1位になるか決まるので、短期決戦で投資ができるかが問われます。

 しかし、すべてのカテゴリーが“Winner Takes All”の構造で成り立っているわけではありません。「地域No.1」のように長い年月をかけて信頼を積み上げていくマーケットもあります。意思決定の際には、作ろうとしているカテゴリーがどのような仕上がりになるかをイメージしながら、投資の仕方を考えるべきです。

退職代行「モームリ」の鮮やかなカテゴリー戦略

田岡:ちなみに、私からもお聞きしたいのですが、松本さんが最近注目しているカテゴリーNo.1ブランドはありますか?

松本:「モームリ」ですね。退職代行というカテゴリーの創出者ではないのですが、今の時代に合ったマーケティング活動を通じて、鮮やかにカテゴリ内で強固なポジションを獲得していきました。

 特にソーシャルの使い方が非常に上手い。定期的にバズらせてフォロワーを集め、ソーシャル上で認知を獲得するだけでなく、『退職代行』カテゴリーがメディアで話題になった時には、既にSNS上で認知されているから、当然「モームリ」に声がかかる。カテゴリーNo.1を通じた話題作りという観点では、「勉強になる」と思いました。

田岡:変化に合わせて、自分たちだけでなく様々なステークホルダーを巻き込み、エントリーポイントをたくさん作っていく。初めに参入した企業が1位とは限らず、顧客の頭の中で1位になることが重要だということに気づかされる事例ですね。

次のページ
カテゴリー戦略に必須の顧客理解、N1も群も両方重要

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この記事の著者

こまき あゆこ(コマキ アユコ)

ライター。AI開発を行う会社のbizdevとして働きながら、ライティング業・大学院で研究活動をしています。
連絡先: komakiayuko@gmail.com

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2025/07/10 09:00 https://markezine.jp/article/detail/49375

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