サービスとの相性だけでキャスティングしない
石川:部活動は、清水エスパルスと特撮テレビドラマ「爆上戦隊ブンブンジャー」がコラボレーションする機会にもつながっています。清水エスパルスファンの俳優・相馬理さんが、「爆上戦隊ブンブンジャー」のブンオレンジ役で出演することをきっかけに、ファンが自発的に「ブンブンジャー部」を発足しSNS発信していました。
クラブ側でその発信を拾い、コラボレーションに至りました。さらに、今では相馬さんには清水エスパルスの広報サポートをする「オレンジアンバサダー」に就任いただいています。ブンブンジャーとコラボしてグッズ販売したり、子どもたちが一緒になってブンブンジャーのダンスを踊ったりする企画にもつながりました。
藤原:Jリーグクラブの中でも、清水エスパルスはファンが自主的にハッシュタグをつけて投稿するケースが相対的に多く見られます。サッカー文化が根づいている静岡という地域性も影響しているのかもしれませんが、ファンの愛着があり素晴らしいと思います。
飯髙:既に企業や製品のことが大好きな人にアンバサダーを依頼するのは非常に重要ですね。そのような人は任期に関わらず投稿を続けてくれる可能性が高いです。一方で事業会社では「商品との相性がいい人」を考えて、インフルエンサーの中から機械的に決めるケースが多い。その場合、契約が終了するとインフルエンサーからの投稿数はおそらく減ってしまいます。
石川:そうですね。極力、清水エスパルスとつながりがある方に声を掛けるようにしています。
藤原:バックボーンに清水エスパルスのアンテナの高さがあると思います。自クラブと関係がありそうな人や物事をキャッチする力はJリーグの中でも有数です。さらに、情報を見つけてからグッズ作りやキャンペーン実施までのスピードもすごく速い。これもエスパルスの強みですね。
国立開催はファンのお祭りであり、同窓会である
飯髙:2022年からは東京の国立競技場でホームゲーム(以下、国立開催)を実施していますよね。この取り組みの狙いも教えてください。
石川:国立開催のきっかけは、クラブ30周年記念の企画でした。以来、毎年開催しています。静岡にルーツを持つファンのお祭り・同窓会をメインテーマにしていて、国立に来ることで、静岡に帰ってきたような気持ちになってもらうことを意図しています。
2024年のキャッチコピーは「ようこそ、国立(ここ)は静岡」で、2025年はまた開催するという意味合いも込めて「ただいま、国立(ここ)は静岡」にしました。来年以降もテーマは定番化していく予定です。清水エスパルスのホームスタジアム「IAIスタジアム日本平(略称:アイスタ)」の最大収容人数は2万人、一方、国立開催では5万人以上のお客様に来場していただけるので、大きな集客機会となっています。
飯髙:確かにすごいインパクトですね。国立開催の告知や集客はどのような施策を行っているのですか?
石川:2024年の国立開催前には、JR 新宿駅南口「JR東日本 新宿サザンボード」に、ビッグポスターを掲示しました。ファンがビッグポスターを見に行って、その下で記念撮影をしてSNS投稿するという自発的な発信がプロモーションと相まって話題になりました。
2025年は、地方クラブと都心というギャップを狙って、渋谷スクランブル交差点の「シブハチヒットビジョン」に動画広告を出しました。動画では、マスコットのパルちゃんと一緒にハンドサインを作れるようにして、写真を投稿してもらえるようにしました。「やっと見に来られた」というコメントとともにSNSに写真を投稿してもらえましたね。
飯髙:いいですね。首都圏に住んでいて静岡のホームスタジアムには行けない人でも、年1回の国立開催に参加することでファン・サポーターであり続けられますよね。そこから、東京開催のアウェイの試合に来てくれる可能性もありそうです。
藤原:そうですね。初回は「周年プロジェクト」として開催したのですが、「毎年開催にしたい」と相談を受けて、プロ野球の興行などもヒントにしながら、今の形に着地しました。さらに、静岡から参加する方に向けてた取り組みも始めており、ブラッシュアップしています。
