広告も注視率は高いのか?広告スロットへの徹底したこだわり
MarkeZine:Netflixにおける注視率は、コンテンツと広告で異なることはないのでしょうか?
田中:そうですね、Netflixは広告の視聴中でも注視率がほぼ途切れません。これにもいくつか理由があり、たとえば、我々はコンテンツのどこで広告を入れるべきかをすべて人間の目でチェックしています。集中してコンテンツを見ている時にいきなり広告が入ってくると、どうしても視聴体験が損なわれてしまいますよね。エンターテインメントサービスとして、視聴体験を損なうようなことがあってはなりません。
ですので、フェードアウト・フェードインが起こる場面や、場面が切り替わるシーンなどに広告のスロットを入れるよう徹底しています。
また、我々の広告スロットは業界平均と比べると非常に少なく、フリークエンシーキャップも厳格で、同じ広告は1日3回、1週間で14回しか配信されません。ちなみに、視聴時間が長くなるほど注視率も非常に高くなる傾向にあり、これもNetflixならではの面白い特徴だと思います。
ユーザーの視聴「ムード」に寄り添った広告配信
MarkeZine:NetflixはこれまでMicrosoft社と協業し広告配信を行っていましたが、広告の管理・配信に関する技術開発を自社内に切り替え、「Netflix Ads Suite」をスタートされました。この具体的な機能について、教えてください。
田中:Netflix Ads Suiteでは、コンテンツのレコメンドエンジンと同じ技術を使ったターゲティングが可能です。デモグラフィックデータでのターゲティングももちろん可能ですが、Netflixならではのユニークな技術として「ビューイングムード」があります。これはNetflixの視聴データに基づき、メンバーの“ムード”、広告的に言うと文脈や温度感に沿った広告を配信できる機能です。
Netflixを視聴中のメンバーは、そのコンテンツに没入しています。この時、年齢や性別などはあまり関係なく、みなさんコンテンツの世界観に浸り、感動したり・ハラハラしたりと心が揺さぶられている状態です。たとえば、私がSF映画などをNetflixで好んで見ているとしたら、Netflix上では非日常を味わいたいムードである、と推測できます。このようにメンバーが浸っている“ムード”と親和性が高い広告を配信することで、視聴体験の向上を図っています。
MarkeZine:なるほど。SFを見ている時に「非日常的な旅行の広告」を流すのと、「生活観のあるトイレタリーの広告」を流すのとでは、視聴体験が大きく変わってくるということですね。
田中:そうです。これは、従来のプラットフォームの広告配信の仕方とは異なるユニークな部分だと思います。
他にも、ユニークな広告フォーマットとして、1社買い切り型の「シングルタイトルスポンサーシップ」や、NetflixのIPとコラボレーションし、広告主向けにカスタムした広告により、高い効果を生み出す「ブランドパートナーシップ」があります。